シカ星 -アメリカ・インディアンはうたう- メアリー・オースティン(アメリカ・インディアン口承詩からの英語訳) ミヤギユカリ 絵 だいこくかずえ 訳 宮川隆 デザイン 葉っぱの坑夫 ★★★★ |
>これは砂漠の丘陵に住む バイユート・インディアンたちの物語、赤ジカを追って若者がずっとずっと大地を駆けていく。
夏の夜あけ、東の空低いところにあらわれる明るい星のはなし。
リズミカルな赤い線で描かれた大地が、白い上質紙の上にどんどん広がっていく。
そして、その上を軽やかに駆けていくのは、絵と文字を追う私たちの目なのか、本物の鹿なのか。
何もかもの制約を取り払われたような自由の空気がこの広い広い画面いっぱいに広がっています。
一枚の横に細長い大きな紙を半分に折り、さらに蛇腹に畳んだだけのこの本は、そもそも本なのだろうか。
本という形からさえも自由になりたがっている本だという気がします。
この詩画集にこれほど似合う形態はないかもしれません。(読むの、大変だったけれど。とくに全部広げて裏返すときには^^)
紙^^本を広げて裏返せば、今度は白地にグレーで描かれた13面の13点の詩画集になっています。
表題作「シカ星」のかろやかなリズムの狩の詩だけではなくて、
子守歌、恋人達の歌、戦いの歌、自然を歌った歌、見知らぬ土地で死んでいく男の歌・・・などなど多彩。
「新生児のためのうた」がわたしは好きです。
子どもをとり上げた人によって歌われる歌だそうですが、そこには子どもに託す大人たちの思いがあふれています。
>子が大地のよき心を、めぐみの主を、理解するように。なんと美しい祈りの言葉だろう。
よき心をはぐくみますように。
どうぞこの子が 大きくなるまで しあわせで、満ちたりていますように。
年老いるまでの道のりをうつくしく歩きとおせるように。
とくに一番最後の言葉が好きです。
「うつくしく歩きとおせるように」・・・美しく
。読了したばかりの「ビーバー族のしるし」の少年エイティアンとその祖父の姿が目の前に浮かんできました。
彼らは誇り高く美しく人生を歩んでいるのだ、という思いとともに。
また「シカ星」はシリウスのことだそうです。
シリウス=「天狼星」と題された「リトル・トリー」の中のとても美しい章と重ねてしまいます。