マインズ・アイ

マインズ・アイマインズ・アイ
ポール・フライシュマン
片岡しのぶ 訳
あすなろ書房
★★★★


戯曲形式の物語です。


コートニーは16歳。
落馬事故で下半身麻痺になってしまい、将来への希望を失って何もかもに対して投げやりになってしまっている。
同室の老女エルヴァがコートニーを誘います。
「いっしょに旅にでよう、イタリアのナポリフィレンツェへ」と。
場所は療養ホームの中。88歳の老女と下半身麻痺の少女が、どのようにして旅をするのか・・・


エルヴァの言葉の一つ一つのなかにたくさんの忘れられない言葉がありました。

>あなたは当分このせまくるしい部屋にいるしかないわね。赤の他人のわたしやメイといっしょに。でも、あなたには心の世界があるんですよ。心の世界はロシアの大平原のように広くもなれば、マンハッタンのどまんなかのように人でいっぱいにすることもできます。


>しっかりとした精神の部屋を作りなさい。(中略)精神の部屋は、そこに住む人に生きる力をくれるのよ――人工呼吸器のようにね。自立して生きるようになってからも、あなたをどれだけ豊かにしてくれることか。

それにしても、彼女の頭の中にはなんとたくさんの詩が入っているのだろう。
そしてびっくりするほど広い知識。
もう文字を読むこともできないのに、頭の中から自由に取り出せる詩。それが文字を読めない彼女を暖める。
なんだかレオ・レオニの絵本「フレデリック」みたいな人。
だけど、彼女はそれだけじゃないのです。
自分の中に溜め込んだ財産をときどき取り出して眺めるだけじゃない。
それをエネルギーに変えて、彼女の心はさらなる高みへ飛翔する。


エルヴァの豊かな人生に教えられることは多いのです。


エルヴァからコートニーへ、そしてその先へ。
エルヴァの遺したものは波紋となって広がっていきます。


図書館貸し出し期限ぎりぎりで、飲み込むように読んだ本です。
もうちょっとゆっくり読みたかったです。