のろのろひつじとせかせかひつじ

のろのろひつじとせかせかひつじ (おはなしルネッサンス)のろのろひつじとせかせかひつじ
蜂飼耳
ミヤハラヨウコ 絵
理論社
★★★★


のろのろひつじとせかせかひつじ。
わたしはどちらに似ているかな。動作はのろいのですが、のろのろひつじほど思慮深くない。あわてんぼうでポカが多いのですが、せかせかひつじのように早くは歩けないし、さっさと仕事をこなすことはできない。

ゆるやかに広がる草原がのんびりとして気持ちよい。こんなところでせかせかなんかできないのです。だから「せかせかひつじ」と言いながら、ほんとはちっともせかせかなんかしていないんです。
とてもやさしくてちょっとおかしな二人がとてもいいです。よい友達だなあ。

詩人の文章なのですね。
もちろん、挿絵もいいのですが、情景が鮮やかに目に見えるようでした。
たとえば、のろのろひつじが旅の行商人から買った青い船の置物が窓辺に置かれているのですが、これ、真似したくなってしまいました。だって・・・

>窓のそとでは、風をうけた木が、ななめになってゆれています。すきとおるように、ゆれていました。船は、窓のところにとまったまま、まるで風のなかをすすんでいるようにみえました。
一年に一度毛を町に売りにいくふたり。でかけるときにはせかせかひつじは歩くのが速過ぎてのろのろひつじは追いつけないのに、毛を売ったあとケーキのお店に行くときはちゃんと並んで歩いている。なのに、本人達はそんな自分たちのことを気づいていない、とか。

森を描くつもりなのに、丁寧すぎて三枚しか葉っぱを描けないのろのろひつじ。たくさんの葉っぱを描くことはできるけれど、いい加減なせかせかひつじ。でも出来上がった絵を見れば・・・とか。

ほんとにいい友達だなあ。
そして、最後のお話はあらら、思いがけないお話で、ちょっと寂しくなってしまった。そして、このお話全部が名残惜しい。