フングリコングリ―図工室のおはなし会

フングリコングリ―図工室のおはなし会フングリコングリ―図工室のおはなし会
岡田淳
偕成社
★★★★


・・・そんなこと絶対おこりっこないんだけれど、なんとなくありそう、あるんじゃないかな、そして、ほんとにあったらいいな、と思わせてくれる岡田淳さんのファンタジーです。
放課後の図工室を訪れる変わった「お客さん」たちに、望まれるままに図工の先生が語った不思議なお話6つ。

一番好きなのは一話めの「フングリコングリ」。
この指遊び覚えましたよ。(今週末の班長会議で眠くなったらこれをやってあそぼ)
身体も心も浮き立つようで、わくわくと楽しくなってしまう。もっともっと上へ上へ。・・・最後の着地点もすてきです。

第二話は「むぎゅるっぱらぴれふぎゅるっぴん」
・・・この不思議なことば、今は本をチラチラ見ながら写しましたが、そらで言えたら本当に楽しいことがおこるかも。(一話目の「フングリムングリ」もそうだ。大きな声で何度も唱えたらそれだけで心楽しくなってくる)
からっぽの洋服がゆれるところや、誰もいないはずの校庭の描写、目に見えるよう。
このクラスの子供達、いいなあ、「なにごとにもうろたえない」というのはすてきな性格ですね。
そして、「大人」の先生を巻き込んで、裸のつきあい(クスクス)になっちゃうなんて最高。

フルーツバスケット
・・・これはタイトルのつけかたが見事、と思いました。ほんとだ、フルーツバスケット
   >きみがひとの気持ちをわからないのも無理はないんだ。
   だって、人って、たいていほかのひとの気持ちはわからないんだ。
だから、わかろうとするのは素敵なことなんだと素直に信じられる。こういうことをお説教にしないで、ほのぼのと広々と、しかも軽やかに見せてくれるのは、やはり岡田淳さんの魔法なんだと思うのです。なんだか心がふんわりと軽くなっていくのです。

最後のお話「なんの話」は、図工の先生自身のお話でした。
これを読んだとき、とびきりすてきな言葉二つに出会い、付箋を貼ったのでした。
ひとつは、お話は全部ほんとうのことかどうか、という「お客さん」からの問いかけに先生が答える言葉で
   >おもしろいと思ったら、心をひかれたら、そこにきみにとってのほんとうのことが生まれるんだよ
それからもうひとつ。「あなたはどんな話のどんな役をしていますか」と尋ねられたら、なんと答えればいいでしょう。
この本のなかの言葉は、
   >ぼくは、ぼくの人生の主役をしながら、まわりのひとの人生の脇役をしています
なぞなぞみたい。ですが、ほんとにそのとおりですねえ。

久しぶりに読んだ岡田淳さんでしたが、子どもたちに注ぐやさしく深いまなざしを感じました。温かく明るい気持ちになれました。そして、ぐぐっと身体(と心)を大きく広げさせてもらったような気持ちになりました。ああ、なんていい気持ち!
6つのお話は、一年生から六年生までの子供達がそれぞれ順番に主人公になっていました。まるで、少しずつ子供達が成長していくように。
そして、こういう本を読んでののびやかに笑い、やがて子ども時代を卒業していく子供達、でも、こんな温かい陽だまりのような読書の日々があったんだよ。
岡田淳さんは、いつまでもずっとこんな子どもの本を書き続けてくれることだろう、と思うとそれもうれしいのです。