われらがアウルズ

われらがアウルズ (ハヤカワ・ノヴェルズ)われらがアウルズ
ロバート・B・パーカー
光野多恵子 訳
早川書房
★★★★


14歳たちが主人公、と聞くとそれだけで素敵なことが起こりそうでわくわくしてしまいます。
この本の主人公ボビーとその仲間たちは14歳。
時は、太平洋戦争が終わってすぐ。・・・これはイギリスではルイスの「オタバリの少年たち」の時代であり、ウェストールの「機関銃要塞の子どもたち」の時代より少しあと。
まるで現代の作者が自分の少年時代を思い出すかのように回想形式で描かれます。この形式が郷愁を誘います。

たった5人、控えの選手もいなければコーチもいないバスケットチーム「アウルズ」が州トーナメントをめざして頑張る――これを背景(?)にしながら、友情、少女への憧憬、そして、ミステリー仕立ての冒険が絡み合って、少年ボビーの14歳の日々を色鮮やかに浮かび上がらせていきます。

ボビーの14歳。
14歳はピュアでまっすぐで、自信過剰で、賢い頭と努力とによって自分の力で何でもできると思っている。行動力もあるが、アンバランスです。
傍からみたらとても危うくてはらはらするのです。だけど、応援せずにはいられません。
危ない、と思うのは大人の心。実際、そんなにうまくいくものですか。ディレーニー先生の言葉どおり、深入りすべきではないのかもしれないのです。
だけど、応援したくなるのは、14歳という輝かしい時代に対する憧れです。怖いもの知らずの少年たち。無謀で、野心家。そして、まじりっけなしの正義感を持っている。
小ズルさのない体当たりの正義感が、何かを開いてくれるのではないか、と期待をこめて、彼らを見守るのです。

時代を意識させるものはたくさんありました。
女性は社会的にこんな地位に甘んじていたのか、
戦争が人々の心に残した痛ましい傷、また宗教を語る妖しい白人至上主義、などなど。
でも、若者たちが現代や私たちの14歳の頃より、ずっとまっすぐに夢を見ているようにも思いました。

彼らのあまりの輝かしさが、すでに消えた時代なのだ、ということを意識させられます。
彼らの成し遂げたことが、過ぎ去った時代の中で輝き、でもそれを知っているのは彼らだけ。そして、その彼らは今はもう大人になってしまった。
そんなことを考えつつ、まるで、古い写真を見るように、彼らの活躍を胸に刻み込むように読みました。