花になった子どもたち

花になった子どもたち (世界傑作童話シリーズ)花になった子どもたち
ジャネット・テーラー・ライル
多賀京子
福音館
★★★★


初めてこの本のタイトルを目にしたとき、「怖そう〜」と思ったものでした。
花になった子ども、ですもん。物言わぬ花。
これは呪いだろうか。悪い魔法だろうか・・・
むかし、妖精のまじないによって、花に替えられた子どもたちがいたらしいのです。でも、これは、そのまじないをとく(とこうとする)希望の物語でした。

お母さんを亡くしたばかりの9歳のオリヴィアと5歳のネリーは、お父さんのおばであるミンティーおばさんのもとにあずけられます。
自らたくさんの「金文字のきまり」を作り自分をがんじがらめにしているネリーと、
彼女を守る母になろうとするオリヴィアは、ぴったり寄り添い、友達を作ろうとしません。
二人の不安で寄る辺ない寂しさがひしひしと伝わってきて切なくなりました。
その昔まじないをかけられて花にされた子どもたちと、この二人のかたくなさが重なります。
悪いまじないをとく良いまじないのために腐心するその昔の「小さな女の子」と、オリヴィアとネリーの心を解きほぐそうとするミンティーおばさんが重なります。

ミンティーおばさんの庭を舞台に「花にされた子どもたち」(作中物語)のお話を書いたエリス・ベルウェザーという作家はだれだったんでしょう。
長年決してとけなかったこぶこぶの結び目のようなまじないが、オリヴィアたちの前で、どんどん解けはじめたのはなぜなんでしょう。最後にみつかったあれ、あのあと、どうなったんでしょう。

たくさんの魔法(謎、まじない)が隠された物語でした。
それはなんとしても解かなければいけない魔法と、とかなくてもそのままで充分幸せになれる魔法と。
「北風と太陽」のお話のように、むりやりに運ぼうとしたことはうまくはいきませんでした。
静かに見守り待つことができる人は植物を育てる魔法を使える人でもあります。
今すぐの結果を求めるよりも、将来に希望を持たせるような子育てができたら・・・そう思いました。

そして、希望をもって「さあ、この不思議をあなたはどう思う?」とやさしく投げかけられた問いかけに答えるように、この物語の第二章を、この本を読んだ人たち(とくに子どもたちが!)作ってくれたらいいなあ、と思ったのでした。

ミンティーおばさんの庭は、作者ジャネット・テーラー・ライルの庭がモデルになっているそうです。では、ミンティーおばさんのモデルは?と想像しないではいられませんでした。