a piece of cake

a piece of cakea piece of cake
吉田浩美
筑摩書房
★★★★


タイトル「a piece of cake」は「ひと切れのケーキ」という意味のほかに「朝めし前さ」という意味もあるそうです。
「ピース・オブ・ケーキ」といいながら、軽やかさに、ささやかな本をつくってゆけたらという、 作者の願いが込められたタイトルです。
これは、まるでおいしい手作りのお菓子のようです。
どれもポケットにすっとおさまるほどの大きさの本が12冊も。
いつものように坂本真典さんの写真で紹介された小さな本たち。この小さな本たちの執筆者は、吉田浩美さん自身、ご主人の吉田篤弘さんの小さなほこっとした嬉しいショートショートがいくつか。それから、坂本真典さんのミニ写真集、フジモトマサル氏の少し怖い大人の絵本、片岡まみこさんのコルク人形の本・・・それらさまざまな本たちに一番相応しい装丁。しかも、小さな本らしいさりげなさも忘れない。
友情と、作者の幸せな気持ちがいっぱい詰まっている小さな本たち。
そして、何よりも、作者の「本」に対する気持ち。どんなに「本」を愛しく思っているか・・・その思いがしっかり伝わってくるのです。
装丁もなんともかわいらしくて、こんなきれいな本を「ピース・オブ・ケーキ」と差し出されたら、幸せで舞い上がってしまいます。

そうそう、誤字標本箱にはたっぷり笑わせてもらいました。
一文字違うだけでその文章全体のイメージがこんなに違ってしまうのがおかしくて。

吉田篤弘さんのショートストーリーはよかったです。こんな素晴らしい書き損じが、氏の机の引き出しにまだ眠っているのでしょうか。お掃除のおばさんに扮装して、お宅に伺いたくなります。

吉田浩美さんの愛する白い本。
  >あえて汚れやすい本。
   儚くて、繊細だけど、たくさんの人が大事にしてくれるような、なんでもない白い本。
そんな本が似合うおばさんになりたい、と一瞬思ったわたしでした。