本棚

本棚本棚
ひよこ舎 編
アスペクト
★★★★


15人の著名人の本棚の写真とインタビュー記事で構成された本です。
名前は聞いたことがあるけれど、ほとんど知らない方でも、
本棚の写真、並んでいる本のラインナップを見た途端、「私、この人好きかも」と急に親近感を感じたり、
「うわ、読んだことのある本がこんなに!」と思ったら、あらら、それらの本の翻訳者さんの本棚だった、とか、
懐かしい本、なくしてしまったけど昔それ持ってた、と思う本を大切にされている方など、誰かの本棚ってなんとまあ、わくわくすることでしょう。
反対に、さっぱり知らない本ばかり、たぶんこれからもあまり読まないだろうなあの本ばかりの本棚(こっちのほうが多い)も。

15人の方たち、それぞれに、濫読ぶりが、おもしろくて。みなさん、あらゆるジャンルにまたがった様々な本たちをもっていらっしゃいます。純文学、古典、評論、ミステリ、SF,ファンタジー、図鑑から絵本、年鑑に辞書。だけど、そのジャンルのなかでも、それぞれに「お気に入り」の世界がある、みたい。頑固に守りたい自分の世界がきっとあるのだ、と思う。だから本棚って面白い。怖い。その人となりの一端をちゃんと語ってしまいます。

写真から、本よりも、「本棚」という家具そのものや、その家具のある部屋の空気、などに惹かれたりもしました。
インテリア雑誌に載りそうなくらい美しく整理してある本棚はすてき、見ていて気持ちがいいけど、
むしろ一見雑然とした本棚に、惹かれます。その迷路の奥にきらっとした宝物がありそうな気配。たくさんの本たちがさりげなく主張しているような部屋。そちらのほうがどうも居心地がよさそうな感じ。これはもう本との同居、でしょうか。

印象に残ったのは作家・山本幸久さんの本棚。
初め写真を見たとき、面食らいました。
ほとんどの本が、本屋で無料でくれる紙のブックカバーのかかったままの状態で棚に収められているのです。
一見して「なあんだ、つまらない、どこに何があるかわからないじゃない」と思ったのですが、持ち主はちゃあんとわかるのですって。
カバーを外さない目的は本が傷むことを防ぐためではあるのですが、実は書店のカバーが好き、とおっしゃいます。
今はなくなってしまったお店のカバーやら、某大学の生協のカバーやら・・・思い出深いものがいっぱい。カバーのデザインだけで、いつごろ手に入れた本か、ということもわかるそうです。
突如、ブックカバー蒐集に目覚めそうになったわたし・・・単純です☆

すごい古本屋さんもあるそうです。喜国雅彦さんの行く古本屋さんは看板の出ていないマンションの一室。外からは、そこに古本屋があるなんて誰にもわからないその部屋。電話して鍵をあけてもらうのだそうです。
中は・・・宝の山だそうですよ。
はあ〜。・・・いいや、そんなすごい所行かなくたって。どうせ私には高嶺の(高値の)花なんでしょ。第一、その貴重さがわたしにわかるわけもなし。眺めるだけで鼻先で扉を閉めなきゃならないんなら最初から見たくないよ、とヒネクレおばさんは独白するのであった。

憧れの本棚は、吉野朔美さんの。
新潮クレストブックスの背表紙があんなにいっぱい。
堀江敏幸さんの名がでてきたのもやっぱり、というか・・・
わたしのあこがれいっぱいで、この人の本棚の読んだことのない本も、いつか手にとってみたいものだと思いました。
とりあえず堀江敏幸さんの「いつか王子駅で」は近々かならず!

それぞれのインタビューには、共感したり、憧れたり、抜書きしておきたい言葉がいっぱいでした。

  >海外で本を読むと言葉が立つんです。読む言葉がすごい立体的に入ってくる。
   日本語を喋ってないし、聞いてないので、日本語がびしびしと入ってくるんです。

  >読む本がない状況が怖いんです。読まないかもしれないけど、とりあえず持ち歩く。
   一番嫌いなのが、持っている本のページが残り少ないとき。
   もう一冊何か用意しなきゃって思います。  
  >若い頃に影響を受けた本として、一冊をあげることはできないですね。
   本って一冊の影響は受けないものです。
   本を読み続ける習慣が身に付くと、人生って本当に変わるんですけど、
   一冊読んで魔法のように変わる本はないです。