ねっこぼっこ

ねっこぼっこねっこぼっこ
シビュレ・フォン・オルファース
生野幸吉 訳
福武書店
★★★★

(アマゾンで扱っているのは平凡社刊、秦理恵子訳のものでした)


  >「お起き、お起き、
        こどもたち、
    さあ、もうすぐ
        春がきますよ!」
と、大地のかあさんに起こされて目をさましたのは愛らしいこどものむれ。

春夏秋冬、四季のめぐりの美しさ。
草花の四季の姿が、子供の姿で描かれています。
第一次大戦以前の絵本です。これぞ様式美、という美しさ。
ページごとの絵のまわりには、額縁のような枠があり、その模様も、左右対称の草木の意匠で美しくて、なんだか宗教画のよう。・・・だから、この愛らしい子供たちも天使のように見えるのです。
一年間。四季はめぐり、季節の移り変わりとともに、植物も昆虫もさまざまに姿を変えていきます。
作者の自然への慈しみを感じます。めぐる季節の愛しさ。

春、土の中から色とりどりの服を着て、手に手に、服の色といっしょの花を抱いた子供たちが楽しそうに地面の上に向かって歩いていくページはとってもきれい。
空は穏やかに晴れて、遠く小鳥たちが飛び、野原が遠くまで続いています。
日がな一日遊んで暮らす夏の日の楽しさに、ジュリエット・キープスの絵本「ゆかいなかえる」の一節「くらくなると、よるのどうぶつたちも やってきて いっしょに うたう なつのうた・・・夏じゅうかえるはあそんでくらす」というくだりをふと重ねたりしています。
それは秋の嵐に吹かれて、あわてて大地のかあさんのもとに駆け戻るまで続くのですね。

そして、訳者の言葉によれば、原題を直訳すれば「根の子供」となるところに、東北地方の方言「ぼっこ」を当てたそうです。
「ねっこぼっこ」
なんて愛しい訳語でしょう。この本のなかの土のにおい、小さな草花の子供たちにぴったりの名前がうれしいです。

お起き、お起き、と庭の草木に呼びかけてみようか。
「もうとっくに起きているよ」と笑い声とともに返事が聞こえてきそうな、きょうはとっても暖かい春の日。