すきまのおともだちたち

すきまのおともだちたちすきまのおともだちたち
江國香織
こみねゆら(絵)
白泉社
★★★★


新聞記者をしている「わたし」が旅の途中で突然迷い込んだ町は不思議な町。まるで場所と場所のスキマ、あるいは時と時のスキマのような、どこにも繋がっていないような町。
そこで出会った小さな女の子はおもてなし上手で、迷子の「わたし」をお客様と呼んで、親切にしてくれた。

こみねゆらさんの表紙の絵が素敵で借りてきた本でした。この絵の女の子の表情。おしゃまさんで、きりっとしていて、ひとりぼっちなんだけど「勇敢」な女の子。小さいのにたくましく生きている女の子が、せつないくらいに愛しくて、いじらしくて。

だけど、そもそも「わたし」はなぜこの町に迷い込んだのでしょう。
「わたし」自身が、思いがけずこの町に、この女の子に惹かれるものがあった・・
だから、迷子になって、帰り道がみつからない不安を一時ふっと忘れて、この町や女の子の家の居心地の良さ(自分のほんとうの居場所のような気持ち)にくつろいでしまうのかもしれません。ほんとうにここは「わたし」の中にある「わたし」の場所だったのかも。
歳を経て、大人になり、結婚して母になり、やがて孫のいる歳になったとしても、「わたし」のなかの一部はいつもちゃんと女の子だったのではないか、と思うのです。
もしかしたらもしかしたら、この女の子は、「わたし」自身だったのかもしれない。
だから――
何度も何度も、歳を経ても、ふいにあの町に迷い込む「わたし」
「わたし」は歳を重ねていくのに、女の子はいつまでも女の子のまま・・・
最後の女の子の言葉が心に残ります。切なくて甘酸っぱい・・・