魔法!魔法!魔法!

魔法!魔法!魔法!―ダイアナ・ウィン・ジョーンズ短編集魔法!魔法!魔法!―ダイアナ・ウィン・ジョーンズ短編集
ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
野口絵美 訳
徳間書店
★★★★


魔法がらみの物語が全部で18! 
一口に魔法、、といっても、さまざまなテイスト、切り口で・・・次はいったいなんだろう?
と、たっぷり楽しませていただきました。


やたらテンションが高くて押し付けがましい 親切すぎるためにとっても迷惑なんだけど、
それをどうしたらわかってくれるんだろう、って思うようなおばさん。
いますいます。
ここまで極端じゃなくても、親戚だったり、ご近所だったり、とにかくかかわりを持たずにいられない強烈な人。
(どうか自分がそう思われていませんように)
こういうおばさん(おじさんも、あ、家具も・・・)が出てくる短編がいくつかありました。
この人たちに起こる摩訶不思議なできごとは痛快痛快。
で、ずいぶんと時を経て、もしかしたら二度と会えないのではないか♪と思い始めると、
妙に懐かしいような気持ちになって、しんみりと会えないことが残念なように思えてくるもの。
でも、不幸にも幸運にも再会のメドがたって、あちら様はこちらと連絡をとりたがっていると知ったら・・・
ひゅうっとわれに帰って、そんな素敵なチャンスは、他の人にお譲りしたい、と強く思うのでした。


強い女の子(女性)が活躍するお話が多かったです。
とくに「第八世界ドラゴン保護区」なんて完全な女系社会だし、男性たちがちょっと哀れでした。


一幕一場の短い物語「緑の魔石」。
あれよあれよの急展開に口をあんぐりあけて茫然自失。
・・・読み終えたあとで気がつきました。
魔法は? 魔法使いは出てきたけど、魔法は?
・・・魔法を使うヒマもないくらいの急展開だったんだ・・・(笑)


「2センチの勇者たち」から、子供の頃の具合が悪くて寝ていたときのことを思い出しました。
ふとんのシワから起伏のある山や谷などの風景を思い描いたことを。


なかでも一番好きなのは「ダレモイナイ」
ダレモイナイ、というのは、ある由緒あるお屋敷の人型家事ロボット。
ちゃんと実体があるのにその名はダレモイナイ。
そして、だれにも姿が見えない精霊(のようなもの)の名がダレカイル。
超未来的なロボットと神話的世界の生き物(?)
冗談のようなことばあそびのダレモイナイとダレカイル。
そして、そのあいだにいるのが子供。少年。
小粋でちょっと温かくて、おもしろおかしくて・・・これはとっても素敵な世界。
この物語、続きがあったらいいのに・・・


どのお話も(怖い「オオカミの棲む森」でさえ)ユーモアたっぷり、軽妙な語り口で、魔法がいっぱいのお祭りのようでした。