散歩手帖

散歩手帖散歩手帖 〜ポケットに憧れを入れて歩こう〜
森雅之
大和書房
発売日:2008-01-22
★★★★


これは漫画でも絵本でも詩集でもなく、・・・カテゴリーを作るとしたら「森雅之」・・・
森さんの散歩は温かくて優しくて、ゆったりと時間が流れる・・・散歩だからもちろんそうなんだけど、このほっとする本が傍らにあればとびきりすてきな散歩をしてきたような気持ちになれるような気がします。

森さんの描く風景、とりわけ人の気持ちの風景が、なんだか懐かしくて温かい・・・
その気持ち、わかる。
でもね、でもね、あまりに些細で、すっとたち現れて意識の表まで上ってくる前に消えてしまうような「気持ち」だったから忘れていたんだよ。
森さんが書いてくれた時、初めて、ああ、って気がついた。そして、気がついたことにほっとした。
こんな些細な思いに気づいて立ち止まってそれをそーっと温かく大切にできる人になりたい。

決して派手ではないし、おしゃれでもないし、現代にマッチしているとは言い難い。だからほっとするのです。
読了したばかりの「それからはスープのことばかり考えて暮らした」から続けてこの本を読んで、あの本の「遠まわり」と森さんの「散歩」はちょっと似ていると思った。
「それからはスープの・・・」の「名無しのスープ」を、この「散歩手帳」の人たちが、散歩から帰ってきたときにそっとごちそうしてあげたい。カップを両手で抱えてゆっくりといっしょに飲みたい。何も言わずにゆっくりと。