『おはようスーちゃん』 ジョーン・G・ロビンソン

おはようスーちゃん

おはようスーちゃん


赤い表紙の小ぶりの本。なんて愛らしい本なのでしょう。
思わずそーっと抱きしめたくなってしまう幼年童話の本です。


ちいさな子どもの日常を描いた物語集ですが、おなじ作者による『すえっこメリーメリー』とはずいぶん雰囲気が違うな、と思います。
沢山の兄姉に揉まれるメリーメリーは、小さいながらに逞しくて、なにかと「味噌っかす」扱いする兄姉に置いて行かれないように背伸びしたり、仲間に入ろうと頑張ったり、あるいは遠回りしたり、とにかくエネルギッシュでした。
そんなメリーメリーに比べると、大人たちを相手にする、ひとりっこのスーちゃんの暮らしは、ゆったりだな、と感じます。


この本には、パパとママと暮らすスーちゃんの日々が九つのお話になって収められています。


お人形の世話をしたり、パパとおるすばんをしながらママを喜ばせることを考えたり、歯医者さんに行ったり、ママとおでかけした先で出会った女の子と仲良くなったり・・・ほほえましい。

たとえば、第一話「スーちゃんの砂場」
ママの銀のケーキナイフや、大事なお皿が、どろだらけになっているのに気がついた時、ママは・・・。
大人から見たらとんでもないいたずらに思えることにも、子どもには子どもの理由があるのですね。


ママの対応を見ながら思う・・・
私は、バタバタして頭ごなしに子どもを叱り飛ばすような駄目親だったのですが、本当は、こんなふうにゆったり、賢く、子どもと過ごしたかったよ。心ゆくまで楽しみたかったよ。


パパやママがゆったりと子育てできるのは、スーちゃんが沢山のすてきな大人たちに囲まれているからでもあります。
町の大人たちがみんなで、子どもを大切にしている感じがいいのです。
ママのお誕生日プレゼントを一緒に考え、手伝ってくれるおとなりのおばさん。
電車に乗るたびに声をかけてくれる車掌さん。
馬車で野菜を売りに来る八百屋さんは、馬に乗せてくれました。
温かい見守りのなかでスーちゃんは、のびのびと暮らします。


子どもがいる風景って、いいもんだ。
子育てのやり直しはできないけれど、町の(ほんのすこしだけ)よいおばさんになら、なれるかな。なれたらいいな、と思います。