Miss.Potter

Miss.Potter / Richard, Jr. Maltby /  Frederick Warne & Co; Mti


Beatrix Potterの物語。彼女の生涯を忠実に綴った伝記物語ではありません。
彼女の生い立ちや業績に関してはほんとにさらっと扱っているだけ。
むしろBeatrix Potterというひとりの実在した人をモデルにして、この時代のひとりのとても魅力的なキャラクタを作り上げたような印象を持ちました。

物語は、控えめで、おとなしいです。
だけど、そのぶん、内向的な彼女の心情がとても丁寧に描かれていて、魅力的であり、その喜びにも苦しみにも、そしてそれを乗り越えていく姿にも素直に共感できました。
わたしには、想像力による豊かな世界をもっているBeatrix、というのが一番印象的です。
彼女は絵の中の動物たちを'friends'と呼び、彼らピーターもベンジャミンもリスのナトキンも物語の行間から飛び出して跳ね回るのを彼女があたりまえのように受け入れているのが。
そしてその世界によって力づけられ、ときにともに苦しみ狂い、癒され、・・・

ビクトリア時代の上流階級(労働をいやしむ階級)の家庭に生まれ育った女性が生きていくための選択肢がどんなに狭かったか、ということもこの物語から改めて知りました。(それは、どの階級にも言えることでしょうけれど)

  >Beatrix  held up her sketchbook.
   ' I am collecting Wonders. And Putting down in my book.'
16歳の彼女の言葉が心に残っています。

昨秋公開された映画「ミス・ポター」を見逃したのが返す返すも残念です。どんなに美しい映像だっただろうと想像しています。