魔法があるなら

Maho_2
魔法があるなら
アレックス・シアラー
野津智子訳
PHP文庫
★★★★


ママと二人の娘、世界で一番素敵なデパート、スコットレーズで暮らす!
この発想だけでわくわくしないはずがありません。
語り手はしっかり者の長女のオリビア(リー)。・・・実は警察の事情聴取(?)に答える形で綴られる物語。ってことは、結局つかまっちゃうんだなあ、と思いつつ、つかまったとはいえ、きっとハッピーな結末であるはず、あってほしい、と期待しつつ、ぐんぐん読んでしまいました。
(なぜつかまってしまったのか?そこに大変な冒険が・・・)

豪華なベッド。賞味期限切れの食料品。おもちゃ売り場に電化製品売り場のテレビ、パソコン。
夜と休日のデパートの暮らしにわくわく。
開店・閉店時間、店員さんや警備の人にみつからないように、やり過ごす場面には常にどきどき。
こんなお話あったよね。
博物館に家出するのは「クローディアの秘密」
夜のデパートを探検(?)するのは絵本「くまのコールテンくん」
そして食料品や家具、おもちゃまで借りてくらすその借り暮らし法(?)は「床下の小人たち
と、これは何度も、違った形で読んでもまだ読み足りないくらいの、すてきな冒険。
容易に想像できるくらい身近な場所に、これほど完璧な、夢いっぱいの心ときめく冒険があるのでした。

仕事をしても6日しか続かない夜逃げだか引越しだかを繰り返し、あげくに住むところをなくしてデパートにもぐりこむ、楽天的な日和見ママと、(そのママによく似た天使のような妹アンジェリーンと)いっしょでは、しっかり者長女リーとしては、先々のことを次々心配して苦労が絶えません。
この2者のアンバランスがなんだかでこぼこしていておもしろくて。
だけど、この能天気ママ、実は彼女なりに越えてはならない一線を保っているし、プライドも持っています。
盗みはしない。だれにも迷惑はかけない。
この家族の、デパートでの暮らしぶりを見てごらん、なるほどな、そんなふうにやるのか、とびっくりします。(ああー。まねしてみたい。←いいのか、そんなこと言って)
そして、何より何より、娘たちに(あきれられても)こんなにも愛されて信頼されて・・・これってすごく大切なこと。
しっかりものであるよりも、心から子供たちを愛していること、自分の生活の規範(それが他人の常識とちょっとずれていたとしても)をしっかり持っていること・・・最高のママではないですか。

脇役もすばらしい。掃除のマージとマージじゃない人、ミスターM、それから決して忘れるわけにはいかないひげのドアマン。
最高に爽やかな気持ちで読了♪ 
現代のお伽噺。こうでなくちゃ♪