プラリネク 

Pr
プラリネク〜あるクリスマスの物語〜
アクセル・ハッケ
ミヒャエル・ゾーヴァ 絵
三浦美紀子 訳
★★★


ドイツでは、クリスマスイブに良い子のもとへクリストキントが訪れて、小さな華奢な鈴を鳴らすのだそうです。
小さな男の子とパパが、男の子のベッドに並んで横になり、クリストキントを待っています。
待っているあいだにパパがクリスマスのお話をしてくれます。
パパのお話のなかの男の子アルトゥアが、チョコレートの箱と洗剤の箱から作ったロボットがプラリネク。

パパが子どもに語るほこっと優しいお話なのですが、「おー現代のお話」と思うのは、お話の途中でクリストキントが来てしまったらどうしよう?と心配する息子に、パパは、「ポーズボタンを押せばいい」と答えます。そして、ボールペンで自分の腕にボタンのマークを描いて見せるのです。現代のパパのお話は、臨機応変で楽しいね。
お話も、出来上がったロボットにプログラミングしなくちゃだとか、友達(おもちゃ)の欲しがってるものがバッテリーのなんとかだとか・・・ちょこっとイマドキ風。このへんの言葉遊びがおもしろいのですが、こういうのを見るといつも思います。原文はどうなっているのかなあ、と。ドイツ語だからまず読めないけど(笑)納得のすわりのよい日本語に納まって、訳者さんのセンスと苦労がしのばれます。

テーマは「贈りもの」です。
このおはなしそのものがパパから息子への贈りものであり、
その贈りものであるお話のなかのロボット・プラリネクが、アルトゥアのおとうさんへの贈りものであり、
その贈りものであるプラリネクが、友人に贈りものをしようとして冒険をする・・・
入れ子のようなおはなしでした。

「贈りもの」の考え方が温かくて、よいです。
  >贈りものとはね、
   君が誰か他の人にあげられると、ということだ。
   贈りものは人を喜ばせるものなんだ。
   つまり、ある人が、もう一人、別の人のことをよく考えたってことだね。
   その人とちゃんと向き合ったってこと。
   その人がどんな望みを持っているのか、何がその人を喜ばせることができるのか、それがわかったんだ。
   だから、その人に贈りものをする。
   贈りものの中では、二人に人が出会う。よい贈り物なら二人の心が出会う。
   一人の人が、もう一人の人を喜ばせたと感じているわけだから。

「贈りもの」をもらった人がその贈りものを心から喜び、贈ってくれた人の気持ちを思いやること。これもまた、最高の贈りものですね。
メリークリスマス。
クリスチャンじゃない我が家ですが、「贈りものを贈り合う日」が互いの気持ちを思い合える記念日であったら、と思います。