シカゴより好きな町

Chicago2
シカゴより好きな町
リチャード・ペック
斉藤倫子 訳
東京創元社
★★★★★


1937年、景気後退により父は職を失い、家を失い、15歳になったメアリ・アリスは、一年間おばあちゃんのもとに預けられます。
おばあちゃんの住む田舎町にも不況と貧困が吹き荒れ、〈メアリ・アリスが転入する)高校からは男の子がいなくなり、おなじみの「コーヒーポット・カフェ」の客もまばら。田舎は大都会シカゴより打撃を受けていました。


・・・暗い話です・・・というわけない!〈笑) なんたっておばあちゃんがいるもの。
知恵と勇気とずるがしこさと抜け目なさ、あてこすりやら毒舌やら、12番径ウィンチェスター銃とともに健在です。
不況も貧困も吹き飛ばしてしまうほどの勢いです。もちろん裕福なんかじゃありませんとも。だけど、おばあちゃんにできないことはないのだ。
真冬に雪の上で罠を仕掛けて狐を捕まえ、皮を売ってお金に換える。
クリスマスのかざりはブリキの缶詰のふたや針金で作る。
パイにする木の実やかぼちゃはよその畑から失敬、アラ、ごめんなさい、いただいてきます。だって落ちてるものは何でも持って行っていいって言ったんだもの、しみったれの二クィストじいさんが。(どうやって落ちたかは・・・し、しらない。)


貧しいものには黙ってよりそい、高慢な連中の鼻をあかして、卑怯者には容赦しない。たくましく「豊か」〈何を豊かというべきかも考えさせられます)に生きているおばあちゃん。
このおばあちゃんを敬遠していたメアリ・アリスも、やがては、自分もおばあちゃんのような人間になりたいと思うようになります。
つまり、自分の流儀をしっかり持って決して妥協をしないこと。そして生きることを限りなく楽しむこと。
  >私はこの祖母の孫で、わたしが身につけたことはすべて祖母から教わったことだ。


最後がよかったです。
前作では、何年も後のジョーイが、この本では何年後かのメアリ・アリスが、大きな大きなおばあちゃんとの大切な一時を、一生忘れられない光景を胸に刻むことになるのです。
生きていくってすばらしい。臆面もなく言える本でした。たくましく、しなやかに、この世を歩いていきたいものです。