続 豚の死なない日

続 豚の死なない日
ロバート・ニュートン・ペック
金原瑞人 訳
白水社
★★★★★


「豚の死なない日」の2週間後から物語は始まります。

作者はこの続編を書くために、前作のあと20年かけたそうです。
訳者あとがきでも
  >映画でも小説でも、とってつけたような続編に出会うことが多いなか、
   これほど納得させられ、満足させられる続編にはなかなかお目にかかれないのではないだろうか。
と書かれているとおり、前作をしのぐほどの感動を与えてくれる本でした。

牧歌的ともいうべき美しいヴァーモント州の風景が、
「豚の死なない日」から一転してロバート少年に牙をむきはじめたようです。
これでもかこれでもか、と襲いかかる自然を相手に、少年ロバートは、家族の責任を負い、一人前の人間になろうと必死に努力します。

自然との戦いの厳しさにも圧倒されましたが、「人間」との戦いがつらい。無言のシェイカーへの侮蔑や極めつけ――銀行とのやり取りは悔しくてしょうがないのだけれど、そう思う私よりも13歳のロバートは遥かに大人でした。誇りを持った「13歳の大人」に頭が下がります。
魂の立派さは、年齢を重ねることとは関係ないのかもしれない。でも、一方年齢を重ねても情けない生き方しかできないとしたらやはりさびしいと思うのです。
そんな無分別な大人に対して、ロバートも作者も、大きく許しているのです。

ロバートを見守る温かい隣人たち。
ベッキー・リーとの淡い恋がかわいらしくて微笑ましい。
学校の図工の先生への子どもらしいいたずらの数々。
そこかしこにちりばめられたたくさんのユーモア。
そしてロバート少年の詩作の才能の萌芽も。
ただただ苦しいだけではなく、温かく若い楽しみに彩られている。13歳の少年の青春物語でもあるのです。

隣人たちの温かい手助けや励まし。
ロバートは彼らを慕いますが、決して甘えません。自らの力でなんとか生活を立ち行かせるために自分の人生に対して誠実であろうとする姿に、わたしも一人の隣人として、応援し見守りたくなるのでした。

最後までがんばってもどうにもならないこともある。そうしたら失意しか残らないのだろうか。
ロバートの一年は、自らを照らす光の明るさや炉の温かさ、その充足感を得るための旅のように思います。お父さんと同じ「豊かさ」をゆっくりと身に着けていくロバート。そして、我慢強く優しいその家族・・・
子どもの時の読書のように素直な気持ちで、ロバートのひたむきさに圧倒され、勇気づけられ、満たされて読了しました。