ゴーストハウス

Go
ゴーストハウス
クリフ・マクニッシュ
金原瑞人・松山美穂 訳
理論社
★★★★


怖かった! すっごく怖かった!
何度も途中で読むのやめちゃおうかと思ったけど、「最後はハッピーエンド」と聞いていたので、それだけを頼りに最後まで読みました。
まだヘロヘロしてます。とにかく読めた〜。
これから読もうと考えている勇気あるかたへ。
どうか、最後まで頑張って読んでください。途中でやめたらずーっとずーっと怖いままです。
最後までがんばればハッピーエンドが待ってるよっ。(にこっ)


  >目に見えない、さびしい子供の幽霊が四人、死んだときの服装のまま家のなかにいた。
   四人とも気になることがあって、地下室のひんやりした暗闇からゆらゆらとのぼってきた。

という書き出しで始まる物語。
この四人の子供の幽霊は今日この家に引っ越してくる家族を待っている。
子供がいたらいいな、自分たちくらいの子供が、と期待しながら。
・・・引っ越してきたのは父親を亡くしたばかりの母と子、二人。しかもそれは不思議な力を持った子供で、誰にも見えない幽霊を見るし、彼らと話すこともできる子供ジャック。

これだけ見ると、なんだか楽しい幽霊話の始まり始まり、という気がします。人間と幽霊の友情物語、みたいな。
そうじゃなかった。
この幽霊の子供たち、「あっちの世界」にいくことができない、
なぜかといえば、「あの人」に囚われていて、この家から決して出ることができなかったから。
あの人の魔手がジャックにのびる・・・

こ、怖い!
何が怖いって、幽霊が怖いよ。
その幽霊の、単なる悪意じゃないところが怖い。
もともとは母性愛。なのだ。
自分のせいで子を失ったという深い慙愧の心が、座り込んだ長い長い年月のあいだに、
もう一度、子に愛されたい、愛する子とともに暮らしたい、という思いに変わっていく。
長い年月のなかで、願っても願っても満たされず、狂ったエゴに形を変えていく。
ひたすら自己実現のためにどんな犠牲もいとわない。目的に向かって一直線。
もともとは母性だから、とにかく強い。
それがなんとも怖いよ。母親のパワーって、正の方向に働いてもすごいけど、負の方向に働いたらやっぱりすごい。
それに対して、肩寄せ合うようにして互いに守りあう四人の子供の幽霊のなんと儚くて悲しげなこと。
ねじまがった母の子への愛を幽霊にたとえたら、こんな感じかな。

また、文章がうまくて。
「この母を愛せ」と迫られるジャックの恐怖がやたらリアルに追体験させられるからたまりません。
ときどき現れる「悪夢の道」〈あっちの世界に行けない幽霊が最終的に落ちていくところ)の風景のおそろしさ。でも、それよりも何よりも、
人の心の崩れた部分の成れの果てみたいなものがどんどんパワーアップして身に迫ってくる。

終わってみれば、怖いよりも悲しい。
「悪夢の道」をだまって漂っていくばかりの魂が。
死後の世界よりもわたしには、「母」というものが、恐ろしくて、悲しかったのです。

わたしだって「愛」よりも「エゴ」丸出しになるときがあります。「素直に服従しろ!!」とほんとはわめきたいときも、至らなさを棚にあげて自分の孤独を嘆くときもある。
かの幽霊は、自分の化身に見えるし、
「悪夢の道」は、人生そのものに見えなくも無い・・・戦いすんで、ここまでくると怖いよりもただ悲しくなる。

ラストシーンがいい。
ジャックの力がこんな橋を架けた。
最後の暗号のコトバがきれい。
暗号につかった単語も、みなきれいな言葉を使っているのがうれしい。