Life of Pi

Life of Pi/ Yann Martel  / Harvest Books


  >When sixteen-year-old Pi Patel finds himself stranded in a lifeboat
   in the middle of the Pacific Ocean
   with only a menacing 450-pound Bengal tiger for company, ・・・・・・
カバーの裏の紹介文はこんな言葉で始まります。太平洋の真ん中で、救命ボートのなか、ベンガル虎と二人きり、興味津々。表紙の絵は、ボートの左右から身を乗り出した少年と大きな虎。おもしろそう!

家族とそれから動物園の動物たちといっしょにインドからカナダへ渡る途中で件の船が沈む。救命ボートで脱出できたのは16歳のパイ少年ただひとり。
いえ、ひとりではない、ボートに乗っていたのは、足の折れたシマウマ、オランウータン、ハイエナとベンガル虎。そして、あれよあれよというまに淘汰されて虎と少年が残る。
虎と少年の甘い友情物語、というわけではない。動物の誇り高さ、とかジャングルの王、とかそういうことでもない。虎は虎。あくまでも危険で恐ろしいのです。だけど、虎は少年を最後まで襲わない。それはそれで理由がある。
そして、この張り詰めた緊張感がPi少年を生かし続ける。295日もの間。
そして、人間と虎との不思議な連帯(のようなもの)が生まれる。互いに信用しないまま、虎は虎、人間は人間である、そのままに。
過酷な漂流生活。脅威に満ちた生の神秘。

3章に分かれた物語の1章では延々とPiの生い立ちや独特の宗教観が語られる。これが実は長くて結構退屈(すみません)で、うーん、いつ船に乗るんだろう、いつ船が沈むんだろう、と表紙の絵を恨めしく眺めていたものだった。(実はこれがすべて伏線)
そして2章。いきなり漂流シーンから始まる。これはもう夢中で読むしかない。最後のほうは、本を手放すことができず、なかなか先へ進めないのがもどかしかった。感動。
そして、3章。これはエピローグ的なものかしら?いらないなあ、こんなの、2章でおしまいでもよかったのでは?と思いつつゆっくり読んだが…。えっ? こ、これは!! このもうひとつの物語はなんだろう。いきなり突き落とされる混乱のなか。そう、つじつまがあいすぎる。そういうことなのか? こんな混乱のなかに読者を残して、作者よ、行ってしまわないで!