Caleb's Story

Caleb's Story / Patricia Maclachlan(著) / Trophy


Sarahのシリーズ3作目。
草原は冬を迎える。
Annaは、学校を終え、町のDoctor.Samのところで働くために家を出た。Annnaが書いていた日記(?)はCalebが引き継ぐ。だからこの巻の筆者はCaleb。
annnaが旅立った日、この家族のもとにひとりの年とった男がやってくる。彼は、Jacobの父。Jacobが子供のときに、家を出ていったきり手紙一本書いてもくれなかった父だった。
頑なに父を許せないJacob。そんな、いつもと違うJacobに戸惑いつつ彼らのおじいちゃんを迎え入れようとする子供達。夫の頑なな心をなんとかほぐそうとするSarah。
なぜおじいちゃんはパパに手紙を書かなかったのか。やがて、Calebはそのわけを知る。そして…

Calebは成長しましたね。頼りになるやさしいおにいちゃんになりました。そして、彼の妹Cassieの愛くるしいこと。質問魔の彼女の存在が、家の中の重い空気をやわらげてくれています。
そして、静かで忍耐強いSarahの優しさ…

また、おじいちゃんがパパにずっと手紙を書くことができなかった理由が痛い。“I was so ashamed”という彼の言葉から、ふとベルンハルト・シュリンクの「朗読者」を思い出した。「朗読者」とは違って、この時代のことだからこういう人たちはおじちゃんのほかにもたくさんいたはずだろうが…それでもやはり、「読めない、書けない」ということはどんなに辛いものか。親子のあいだにこれほどのわだかまりをつくっても、その秘密を言えないほどに恥じなければならないことだったなんて…

隣家もなく、大草原にこの家族だけが大地に存在するかのよう。こんな環境だからこそ、家族、という言葉の重みがずしっと感じられる。
やさしい、温かい、癒し…これらの言葉は、ふわふわと宙に浮いているものではない。きびしい試練に耐えて動じない強さを持って初めて本当の「やさしさ」を得ることができるのではないか。
この本の最後の言葉“Not one thing in the world is wrong."に、気持ちよく安らいでいる。さまざまな試練をのりこえたからこそ。手遅れにならないうちに踏み出す勇気をもてたからこそ。
能動的に動いて、はじめて手に入れることが出来る平安がここにある。