『ブンナよ、木からおりてこい』  水上勉

木登りの得意な殿様ガエルのブンナは、ある日椎の木のてっぺんに登って行った。
そこは広くて、土があり、草も生えていた。
しかし、そこは実は、鳶が自分の餌の貯蔵庫として使っている場所だった。
怖ろしい鳶は半死の動物達(雀、百舌鳥、ねずみ、へび、ウシガエル…)を次々に運んできて、しばらく放置したあと、運び去って行く。
ブンナは土の中に身を潜めて、半死の動物たちの話す言葉や叫びなどを聞いている。

命を食べなければ生きていけないわたしたち。
一見残酷で暗い話だけれど、
食べるということは、実は、他の命(たくさんの命)が、私の中で別の生になる、ということなのだ、
お互いに生まれ変わりながら、もっと大きな生命の木を作っている。だから私たちの生は尊いのだ、とそういうことでしょうか。

わかりやすいお話で、しみじみと命や自然の美しさが描かれている、と思います。寓話のような物語。文体が独特で古い感じ。読みづらい文章だけれど、むしろ、朗読すると案外、すらすら読めそうな気がしました。