『セシルの魔法の友だち』  ポール・ギャリコ 

南フランスの農場に住む少女セシルと彼女のペット(というよりほとんど恋人?)のてんじくねずみ(モルモット)ジャン・ピエールのかわいい物語が4つ。
どのお話も、少女セシルを見守る大人たちが温かく描かれていて、安心して読めます。後味の良いハッピーエンドになっていて、読後、幸せな気持ちになれます。
子供の本ですが、大人の良心についての物語、とも思えました。のどかな気風がみちた「古き良き時代の物語」と言ってしまえばそれまでだけれど、もう少し余裕を持って、自分の回りの子供達に接していきたいものだ、と反省したりしました。
このくらいの余裕で、わが子も人の子もなく、子供達を大切にしようという気持ちが世の中にあったらいいなあ、と素直に思いました。

一話を読んでみれば、大時計が鳴り終わるまでの魔法、など、ピアスの「トムは真夜中の庭で」をちらりと思い出しました。このままファンタジー仕立てで物語は進むのかと思ったのですが、「魔法」らしい「魔法」はこのお話だけでおしまい。
2話以降は、このてんじくねずみジャン・ピエールが序所に脇役に移っていくような気がしました。ジャン・ピエールを思うセシルの物語になります。そして、3話4話と進むに連れて、セシルをとりまく大人たちの物語へと移行していくような気がしました。
大人の善意のなかで、さまざまな事件(?)に巻き込まれるジャンピエールを気遣い、せいいっぱいに活躍するセシルの一生懸命さ、ジャン・ピエールへの思いが、伝わってきました。

好きなのは3話の「ジャン=ピエール世界をめぐる」です。読んでいる最中はちょっと冗長な感じがしないでもなかったんですけど、つぎつぎセシルのもとに集まってくる世界中からの善意の手紙にわくわくしました。

わたしは、1話のあの魔法が、2話以降もときどきあったらいいな、と思いました。 子供の一途な思いがこんな奇跡(たった一度だけの奇跡)も起こすのだ、ということなのでしょうか。
大時計の魔法から始まるファンタジーをちょこっと期待してしまったので、とんだ勘違いの末、(勝手に)ちょっと拍子抜けしてしまいました。