『クリスマスの幽霊』  ロバート・ウェストール 

12月から抱え込んでいるクリスマスの本です。(もちろん貸し出し期間を過ぎて延滞中!――って威張ることではありませんでした。ゴメンナサイ、図書館さま。いつもお世話になっているのに。あした返しに行きます)
さくさく読めば1時間以内に読めてしまう短いお話。そして、後書き代わりに、ウェストールの遺作「幼いころの思い出」併録。

舞台は1930年代のイギリスの田舎町。
ささやかだけど平和で温かな家庭。クリスマスが近付いてくる。一日ごとに増えていく飾りつけ。一日ごとに増えていく料理。一日ごとに様々な親戚から届けられる特別なご馳走。少年が感じる高揚感。指折り数えるクリスマス。

しかし、この物語は、明るく華やかなクリスマスとは赴きが異なっています。クリスマスイブのまさにその晩。人の心と無機質な機械のハザマに生まれた「幽霊」の伝説。その幽霊を見たら必ず人が死ぬというジンクス。夜の工場の怖さ。

けれども、ホラーっぽさは感じませんでした。
感じたのは、ひたすらに父親を慕う少年のひたむきな思い。工場の職長であるお父さんはクリスマスイブであっても、工場で働いているのでした。そしてこの親子を囲んで工員たちのさりげない温かさがさわやかなこと。

この物語が、ウェストール自身の子供時代をモデルに書いたものであることが、併録の「幼いころの思い出」とかぶる部分があることにより、わかります。
ウェストールはその回想記のなかで、ガス工場の職長であったおとうさんのことを「油まみれの魔法使い」と呼んでいました。
お父さんを仰ぎ見る息子の気持ちにじんわりとしてしまったのでした。
クリスマスの晩に語られる幽霊話は、「奇跡」の物語でもあり、父と子の心を結び、温かいのです。

子供にとって、おとうさんはいつの世も「魔法使い」であってほしい、子供達は自分のおとうさんを自分にとっての魔法使い、と胸張って自慢してほしい、と思ったのでした。
「油まみれの魔法使い」――なんと素晴らしい賛辞でしょう。

☆献辞偏愛
  >友人、バル・ビアマンに
    なんども、ハギスをありがとう。
この献辞が好きです。「ハギスをありがとう」に頬の筋肉が思わずゆるんでしまいます。