ちいさなしま

ちいさな島

ちいさな島


以前、本プロで、アメリカ在住のようさんが紹介されていたマーガレット・ワイズ・ブラウンの絵本「The Little Island」がとても気になっていました。
公立図書館の蔵書検索で、マーガレット・ワイズ・ブラウンで検索してみましたが、ヒットするものはありませんでした。
アマゾンの洋書で検索して、表紙画像を見ながら、日本でも翻訳されているのだろうか、翻訳されていたらどんなタイトルで?と思いをはせました。

日本では出ていないのかもしれないと諦めていたのですが、
先日、偶然に図書館で、みつけました。
アマゾンで見た表紙の絵です!
急いで手にとりました。
タイトルは「ちいさな島」、訳は谷川俊太郎さんです。
だけど、作者名がゴールデン・マクドナルドになっているのです。これはマーガレット・ワイズ・ブラウンの筆名のひとつだそうですが、これではみつけられないはずです。
絵はレナード・ワイスガード。黄金のコンビ。

*****

マーガレット・ワイズ・ブラウンの美しい詩の世界を谷川さんが流れるような日本語に替えてくださいました。

  >ちいさな島には ちいさな森があった。
   7ほんのおおきな木と
   17のちいさなしげみと
   1つのおおきないわが そのなかにあった。
   とりたちは その森にあつまり、
   チョウとガが 海の上をとんで
   森にやってくる。

この絵本のなかから、美しい言葉にのってワイスガードの絵が、いきいきと、潮の香、風の音、生き物達の息遣いや森の匂いまでも届けてくれるのです。
行った事のないこの島の浜辺に立ち、風になぶられ、小さな森の中、鳥の声に耳を傾けているような気がしました。
深呼吸してしまう。なんと素晴らしい夏の日。きらめく命の島。きょうこの日に出会えて本当によかった。

やがて、島に、家族といっしょに小さな猫が一日だけのピクニックにやってきます。ここからが、いうなればこの絵本の第2章と言うことになると思います。
猫と島とが語り合います。
自分が島だということについて。
世界とつながっていることについて。
すーっと気持ちよく喉元を通っていく優しい言葉。優しい言葉ですが、深みのある言葉です。

…と書くと、説教臭い感じがするでしょうか。
とんでもない。
寓話として奥行きを覗くも、無邪気なこねこになって「ひみつをしったうれしさ」をひっそりと感じてもいい。
どこにも押し付けがましさはありません。
大体、作者はどういうつもりでこの絵本を世に送り出したのでしょうか。

この絵本の最後の言葉が心にのこります。

  >ちいさな島でいることは すばらしい。
   世界につながりながら 
   じぶんの世界をもち
   かがやくあおい海に かこまれて。

大きな群れの中にいると、安全だけれど、自分が見えなくなっていく。
おおきな群れの中で、自分を持つことはむずかしい。
人々に心を開き、人々を受け入れ、その助けに感謝しながら、それでも、変えてはいけない自分を持ち続けることができたらいい。それはとても難しい、と思うのですが。
もう一度、島を見ながら深呼吸する。

この絵本を読んだ次女が言いました。「小さいけど大きな島だな」――ほんとにそうだね。