- 作者: やしまたろう
- 出版社/メーカー: 福音館書店
- 発売日: 1963/08/25
- メディア: 単行本
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ニューヨークに住むモモという女の子のお話。
3歳モモは、お誕生日に買ってもらった雨傘と長靴がうれしくて、夜中に起きだしてもう一度ながめたくらい。
かさをさしたいモモの気持ちとは裏腹にお天気の良い日が続く。
傘をさしたくてたまらないモモとおかあさんのやりとりがほほえましい。
おとうさんが愛娘の思い出に、大切に作った本だって気がする。
この子供のしぐさのかわいらしさ、その言葉のほほえましさ。
真剣なモモを差し置いて、ああ、わたしもやっぱり親の目。
そして待ちに待った雨が降る。
「あら?」
モモが開いたかさは水色。
どうしてかなあ、わたし、ずっと赤い傘を想像していたんです。
三歳の女の子が、生まれて初めて持った自分の傘。自分だけの大切な傘。
その傘に水色の無地を選んであげる親のセンスに、自分と違う強い個性を感じて、見入ってしまいました。
雨が待ち遠しい、ようこそ雨、雨がうれしい、雨やまないでねずっと。そんな気持ち。
「ぽんぽろぽんぽろ・・・」と続く擬音のなんという楽しさ。
>――わたし、
おとなのひとみたいに、
まっすぐ あるかなきゃ!
初めての傘をさして、少し緊張して、ほら、このほこらしそうな後姿をみてごらん。これは親の目に映った、ずっと消えない娘の姿。
振り返って、お父さんの顔を見てみたい。きっとまぶしそうな顔をしている、娘以上に誇らかな顔をしている、きっときっと。
そして、最後の2ページ。
頬杖ついた大人げな女性の顔。そえた言葉は、
>モモは、
もう いまでは
すっかり おおきくなって、
この おはなしを
少しも おぼえていません。
覚ええいても いなくても、
これは、
モモが 生まれてはじめて
あまがさを さした ひだったのです。
そしてまた、
モモが うまれて はじめて、
おとうさんや おかあさんと
てをつながないで、
ひとりで あるいたひだったのです。
このページの女性がながめているのはきっと幼い日のアルバム。おとうさんとおかあさんの、思い出話を聞きながら、きっとくすぐったくて、手元のアルバムに目を落とす。
わたしはこのページでいつもじんわりしてしまう。いつまでも幼いままでいるはずのないわが子を思って。
でも、
この本を読んでもらっていた小さなモモと等身大だったわが子はいつも、最後のページで、ふっと取り残されたような顔をした。この女性が小さなモモと繋がらなくて。
小さな娘はいつまでも小さなまま、大人になるのは、何億年か先のような思いだったに違いない。
そんなこんなもひっくるめて、ときには、子供の幼い日の大切な思い出を紐解いたりしてみたい。