でこちゃん

でこちゃん (わたしのえほん)

でこちゃん (わたしのえほん)


広いおでこのおかっぱ女の子の顔がばーんと表紙いっぱい占めている絵です。しかも、おでこのまんなかにタイトル「でこちゃん」とまあ、赤い字で、これまたでかでかと。こんなにおでこを強調しなくてもいいでしょ、というくらいのインパクトのある表紙です。
ページをめくって最初に感じだのは、「うわあ、なつかしい!」
一昔前の子供の世界です、これ。
日本のおうち。下町の商店街。
昭和のある時期の匂いのする色合い。
ほんとうになつかしいんです。

そこここのおうちからカツオ節を削る音が聞こえてきそう。そこの曲がり角からチンドン屋の物悲しくて派手な音楽が聞こえてきそう。
この絵本は端から端までじっくり楽しみます。

懐かしいんだけど、ちょっと変。(でも、その“変さ”がまたまた懐かしいです。

まず、商店街の看板が変。「かしわせ食堂」「がらくた屋」、第一「おだんごなす」って何?
通りにいる人たちもなんだかへーん。あの忍者みたいな人、なに?
わけありげなお相撲さんがふたり、人目をはばかるようにして道を急いでいるよ。

子供部屋の壁にお習字が貼ってあるけど、あのう、「何だってきつねくん」なんて、どういう気持ちで清書したのでしょうか。
おうちのなかのがちゃがちゃどたどたが聞こえてくるよ。

…おかしいんだけど、このおかしさは懐かしいんです。なんて言ったらいいのかなあ、下町的、路地裏的おかしさ。上品すぎないなつかしさ。
子供の目に映る世界って、、もしかしたら、こんなふうにおかしくてうれしくて、でもなんだか不安で不思議なことが
こんなふうに混ざり合って見えていたかもしれない。だから、懐かしいのかもしれません。


てこちゃんの髪の毛を切りすぎて、おでこがですぎてでこちゃんなんだけど、まあ、あけすけな下町家族。
へこんでいる子供に「あら、てこちゃんがでこちゃんになっちゃった」なんて、言っちゃって、いいのね〜。
また、おにいちゃんは余計なことしてくれるしね。でこちゃんには悪いけど噴出してしまう。(だって本当におかしいんだもの。ごめん、でこちゃん、傷ついたよね。)

幼稚園にいけない、となげくでこちゃんにおねえちゃんのおまじない。これ、本当にすてきでした。
そして、
 >つぎのひ みんな でこちゃんに なっていました
というのもいい。あらら、先生まで。
大家族の、どこにでもあるようなエピソードが温かい。
読んでいて思う。うんうん、そんなことあった。あー覚えてる。そう、今でこそほほえましく読んじゃうけど大事件だったんですよね。