- 作者: 阪田寛夫,V.ベレストフ,長新太,Valentin Dmitrievich Berestov
- 出版社/メーカー: 福音館書店
- 発売日: 1993/11/25
- メディア: 大型本
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この絵本はロシアの詩人であり考古学者でもあるべレストフが書いた詩をもとにして作られたそうです。
>にんげんが うまれる
ずっと ずーっと まえのまえ
そのまた ずーっとまえに
という言葉で始まるおはなしはとてもシンプルです。シンプルだけど、よろこびがじんわりとゆっくりとからだ全体に行き渡って行くのを確認できる、副題通り、「はじめてのうた」の物語。
長新太さんの絵がとてもいいです。
どがーんどがーんと噴火を繰り返す火山に囲まれたイグアノドンのさびしい世界が、ダイナミックに描かれています。
このイグアノドンは、目もなく、肉付きもはっきりしない陰のように描かれているのですが、彼の気持ちがじんわりと伝わってきて、愛しくてたまらなくなってしまいます。
背景のピンク、深緑、オレンジ、紫、明るい緑。この基調の色あいはイグアノドンの気持ちを表しているようです。
わきあがるうれしい気持ちがどかーんと噴火する火山を背景に、画面を突き抜けていくようです。オレンジが基調のページです。
よかったねえって言いたい。
そして、飄々と歌い続ける「小さな友だち」の「だくちるだくちる・・・」
読み終えて、ふと思いました。初めての歌は独唱ではないのだ。低くリズミカルに歌い続けるだくちるだくちるにあわせて歌う(あるいは踏み鳴らす足音のリズムの、また、ダイナミックに響く火山の「どがーん」の)混声合唱なのだ。
遠い過去から贈ってくれた、地球が歌うダイナミックな喜びの歌。
現在、私たちの身の回りには音がたくさん。友だちもたくさん。でも「歌」っているかな、こんなに素晴らしい歓喜の歌を。ただの騒音だったら寂しいな。友だちがいるのに、イグアノドンより寂しい思いをするときもあるんじゃないかな。
長新太さんの絵が喜ばしく、本をはみ出して飛び出していってしまうのを防ぐため(?)周囲に白い枠取りがしてあるのが印象的でした。