ノーダリッチ島 K・スギャーマ博士の植物図鑑

ノーダリニッチ島K・スギャーマ博士の植物図鑑

ノーダリニッチ島K・スギャーマ博士の植物図鑑


ノーダリニッチ島で学究活動を続けているスギャーマ博士が、島でみつけた珍しい植物の研究結果を、図鑑として発表されました。

図版は古風なボタニカルアートで、植物の姿だけではなく、花や実の断面図なども記されていて、大変見やすいものです。
解説文も丁寧で、開花、結実の時期までわかりやすく説明されていますし、アルファベット順のさくいんもついていて、親切なつくりです。
この図鑑のほか、ノーダリッチ島の動物図鑑もでているそうですので、あわせて見たら、きっとおもしろいことでしょう。(このたび、図書館では「動物図鑑」のほうが借りられませんでしたので、残念なのですが、次回のお楽しみにします)

この図鑑のなかで、わたしが気に入っているのはアドヘア(Adhare)という常緑小低木なのですが、うさぎの顔そっくりの花を咲かせます。
またウィスプ(Wisp)という多年草は、四年に一度油分を多く含んだおしべが発火するそうです。このページには、白い花のまんなかにぼーっと炎をろうそくのように灯した姿が描かれているのですが、なんとも幻想的です。
ズートヌートランク(Zootnootrunk)という多年草は、草丈1メートルほどだそうですが、何よりおどろくのはその姿形でしょう。まるで、ゾウの鼻がそのまま地面からつきだしているのです。解説文にも「はじめてこれを見たときは、植物とは信じがたく、地中にゾウでも埋まっているのかとおもった」と記されていますが、まったく奇妙な植物です。
フォーキー(Forky)というのもあります。フォークを上向きに地上にならべたような花穂を持つ植物ですが、針金状に固くて、この上で転ぶと大変なことになりそうです。

…ところで、この図鑑がすべて嘘っぱちだと、どのへんで気がつきましたか?
まじめ(♪)なわたしは、ぱらぱらとめくりながら、「ほう、こんな珍しい植物が地球上に存在していたとは!」とあやうく信じてしまうところでした。
しかし、この大真面目のうそっぱちがなんとも素敵です。うそをつくなら、ここまで徹底して欲しいです。
嘘と知ってしまっても、この図鑑のファンタジックな植物は、芸術と科学が折り合いをつけたようで、一つ一つ、丁寧に眺めて楽しみたくなります。
そして、この島の姿を思い浮かべるのです。どんな島なんだろう。「もしかしたらこんな植物も生えているかもしれないな」と新しい植物図鑑のページを考えてみるのも楽しいです。
うちの小学5年生は、バスケットリー(Basketree/落葉低木)を指して、「これは確かに見たことがある」と言っているのですが・・・大丈夫かなあ、わが子よ。