マンヒのいえ

マンヒのいえ

マンヒのいえ


韓国の絵本です。
マンヒは両親といっしょに都会のせまいアパートから、おじいちゃんおばあちゃんの広い家に引っ越します。
最初のページは引越し荷物が散乱したアパートの絵。
 >おばあちゃんの ところでは イヌも 3びき かっています。
  イヌと あそぶのも とても たのしみです。

そして、見開きのタイトルページです。
レンガ張りの4階建てアパートから、おばあちゃんの大きな家(木や花がいっぱい)までの絵地図になっているのです。
色とりどりのたくさんの大きな家、小さな家。橋や陸橋。城門(かな)、駅があって道路にそって線路が走る。山も川も、道路沿いにたくさんの木々。
なんとも楽しくて、このページだけでも、見飽きることがありません。私たちは、マンヒといっしょに、道々の風景を楽しみながら、おばあちゃんの家に着くのです。

マンヒといっしょに、家の部屋部屋を見て回ります。
アンバン(ざしき)でミシンをかけるおばあちゃんのわきにあるのは、ひいおばあちゃんも使っていた鋏。
台所の勝手口からのぞきこむ犬たち。(おいしそうな匂いが好き)
納屋にはたくさんのカメがある。しおガメ、ほしたなっぱのカメ、さかなのひもののカメ・・・
納屋の階段にこしかけておかあさんが絵本を読んでくれています。なんの本かなあ。
うらのにわにはみそこうじをつくるときのための大きなかまどがある。
 >ねっ、タッタク タッタク ひのもえるおとって いいおとでしょ。
子ども部屋からとなりのマル(居間)までおもちゃを広げてたくさんの子どもたちがあそんでいる。あ、犬がぬいぐるみをくわえて玄関から出て行く)
屋上にほした布団のあいだであそぶマンヒを見て、なつかしくなってしまった。わたしも、そしてわたしの子どもたちも、小さな時は、干したふとんの下であそぶのが好きでした。お日様の光をいっぱい吸ったふとんのいい匂いがしてきそうです。
おとうさんの部屋が魅力的です。すごくたくさんの本があるのに、きちんと片付いていて、気持ちがいい。このおとうさんは、お風呂場で、手に泡で長いつめを作って恐竜になってくれます。
・・・・・・

細かく細かく眺めていくと、次々発見があるのです。ふとんの模様や屋上に植えてある草花の種類、飾られた写真や、ついたてや花瓶のデザイン・・・見飽きません。

マンヒの案内で、おうちの中を見て回りながら、ほっかりと温かい気持ちになっていくのは、この緻密な絵の中から、家族みんなが、家族や生活を大切にする気持ちが伝わってくるからだと思います。
不思議に、お隣の国のお話なのに、なつかしいような気持ちになってしまうのです。

うちで、「この本いいね」と言ったのは、意外にも高校生の長女でした。
うちは古い農家。彼女が育ったときは、おじいちゃんおばあちゃんもまだまだ元気で、ばりばり働いていました。
大家族(近所に住む親せきもしょっちゅう混じって)みんなが囲む大きな食卓、大きなお皿。子どもたちがばたばたと駆け回る座敷、庭。
この絵本とよく似た空気が家の中にいつもあったのですよね。
ずいぶん小さくなってしまったわが家族ですが、この絵本のなかから、懐かしい人の顔や声が蘇ってきます。