レナレナ

レナレナ (リブロの絵本)

レナレナ (リブロの絵本)

  • 作者: ハリエット・ヴァンレーク,野坂悦子
  • 出版社/メーカー: リブロポート
  • 発売日: 1989/07
  • メディア: 大型本
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ehonwokakaete絵國香織さんの「絵本を抱えて部屋のすみへ」で紹介されていた本のなかでも、この「レナレナ」はかなり気になる絵本、一度は手に取ってみたい絵本でした。
 >淡々とした語り口のばかばかしさ、絵のもつ妙なリアリティ、
  前半十六こま、後半八こまに区切られた、色彩のまとまり。
  いちばん惹かれるのは、これが日常生活の再構成だということ。
  レナレナという名前の、やせっぽちでいま風の女の子の身辺雑記として、
  物語は微風にそよぐ草くらいにわずかに動く。
  そのときに、垣間みえるニュアンス。     (文庫本104ページより)

不思議な魅力をもった絵本でした。
この絵本の素敵さは絵國香織さんがとてもセンスよく本に書かれているのでわたしはそれ以上にはとても書けないですが・・・
細いからだに真っ黒の棒のような髪の毛の女の子。ヨーロッパの匂いのするセンスのいい色合いに、手書き文字。おしゃれな本だなあと思います。
この本の中のレナレナの奇妙でばかばかしい遊びの数々は、おとなだったら眉をひそめたくなるようなこと。でも、おとなが見ていない自分だけの時間空間に、子どもは、こんな不思議な(そして、たぶんにいかがわしい)世界を持っているものだと思うのです。
たとえば、雨のしずくをためてつくる甘いお茶「雨茶」をひとくち楽しむこと。
また、小さい青い小箱に、爪のきりかすをいれて隠しておくこと(古い爪のにおいがする)
ミミズ引越し用の箱をもっていること。穴を掘って掘り出したミミズを草や花のはえているところに連れて行くために。
・・・・・・

こういうことを素敵と感じるかばかばかしいと感じるかが、子どもとおとなの境目のような気がします。
ばかばかしいと思いますよ。私、分別あるおとなですもの。でも、(大きな声で人に言えないことだけど)本当はちょっとやってみたい。ね、そう思いませんか。子どもだったころの甘美な何かが蘇ってきます。そして、思いがけず、こうしたことのひとつひとつが美しい日々から切り取られたもののように思えてきます。
ちょっと孤独(でも決して寂しくはない)な時間に子どもがつむぐ美しいレースのようなひととき。

この絵本を借りてきたとき。
うちの子が言った言葉は「変なほーん。なに、これ。おかあさん、どうしてこんな本かりてきたの?」でした。
そして、コロコロと笑い転げるのでした。
なのに。
毎日見てるのですよ。なんで?
「なんでかなあ。なんか見たくなっちゃうんだよね。だっておもしろいじゃない。これ、すごくおもしろいよ。」

絶版だそうです。勿体無い本です。