>ハードマンっきょうだいは,世にまたとないわるだった。
彼らはうそもつけば、ぬすみもし、
葉巻を(女の子まで)くゆらすと思うと
弱いものいじめをし、先生たちにまであくたいをついた。
言葉づかいもさいていで、
神さまのことをののしるかと思うと、
フレッド・シューメーカーの
いいかげんこわれかかった道具小屋に火をつけた。
と、こういう書き出しです。
6人年子のハードマン兄妹。「わんぱく」なんてヤワなもんじゃない。当然教会になんか行った事もなければ、クリスマスの物語を聞いたこともない、っていうのです。誰も教えてくれないし、文字なんか一個も読まないし、家のテレビはこわれてる。
このハードマンがひょんなことから教会学校の例年の退屈な出し物「クリスマス降誕劇」の主要な役割を独占してしまうことになる。――マリアとヨセフと三人の博士、天の御使い。ほら6人ぴったり。
すっごくおもしろかったです。内容もおもしろいんですけど、訳が最高。もうひたすら笑いながら一気に読んでしまいました。
まずは、初めて聞くクリスマス物語に、6人がやたら激怒する。
君達はヘロデ王の子孫か、と思うほどのハードマンたちなのに、「あんな悪事を尽くしたヘロデがベッドで死ぬなんて許せない。だれかにヘロデ役をやらせろ」という。
>クリスマスものがたりが、
まるでアメリカの連邦捜査局の調査しりょうからでてきた話ででもあるかのように、
彼らは話に夢中になり、
ヘロデ王がてってい的にやっつけられるように願い、
馬小屋で赤ん坊を産んだマリヤのようすを心配し、
博士たちのことをきたないスパイよばわりした。
そう、ハードマンたちは、マリヤが「にんしん」してるのに馬小屋にほうりこむなんてひどい、とわめき、「なんだって、赤ちゃんを布でぐるぐる巻きにして、えさ箱にいれといたんだって?」とわめき、さらに「児童福祉はどうなってたのよ?」と叫んだ。
(実はハードマンマンきょうだいはいつも児童福祉の役人に目をつけられていた)
こんなふうにして始まった降誕劇の練習が順調に進むわけないのです。
だけど、だんだん、不思議なことが起こり始めます。
降誕劇指導の婦人の言葉。
>「あれは、まったくのところ、ひどいお話だったんですわ。
それなのに、わたし、
きょうまで、そんなふうに考えられるなんて、思ってもみなかったんですの。
わたしが考えていたのは、温かい、きれいな馬小屋で、
まわりにやさしい動物の息づかいが聞こえ、
なんともいえない、かぐわしいわらのにおいもただよってくる
っていう所でしたの。
たとえそうでも、マリヤが馬小屋にいれられたっていう事実に
変わりはないでしょうにねえ。」
そうして、いよいよやってきた本番。
先は読めてしまうんだけど、とにかくおもしろいです。機関銃のように軽やかな言葉がぽんぽん飛び出してきます。皮肉なスパイス付きで。
そして、思いがけず感動してしまう。こんなクリスマス物語もいいかもね・・・
>「おい、あんたがたに、みどりごが生まれたんだよ!」