『シー・ペリル号の冒険』  フィリップ・ターナー 

「シェパートン大佐の時計」「ハイ・フォースの地主屋敷」に続くダーンリィミルズのシリーズ第三部です。「ハイ・フォース」を読んでから一年もたってしまいました。
まだまだかわいかったデイビド、ピーター、アーサーの三人組も早チャールズ二世中学校の最高学年(日本じゃ高校生に匹敵する学年)

このシリーズ、巻ごとに、町の歴史的な秘密をめぐる謎解きと宝探しのおもしろさがあるのですが、それが巻を追うごとにたいしたことなくなってきています。今回はガリア戦記時代のローマ人ののろし台の遺跡発見、ということなのですが、はっきり言ってこちらは物語の「おまけ」みたいな扱いになっていました。

むしろ、三人を中心にした少年達の夏の日の冒険が主軸になっています。
夏の日の輝き。
そこに村の下水問題がからみ、少年達を輝かしい子供時代から、大人へぐいと引き上げます。

荒野(ムア)の広大な自然のなか、教会を中心にした小さな村、三人の数々の冒険に渋い顔をしながらも(自分の中に眠る少年の心で実はワクワクしながら〕温かく見守る馴染みの大人たちも健在でした。
「北方のライオン号」で航海に出た提督も戻ってきています。
今回、カーネギー師に「いばりくさった後家貴族」と罵倒された背筋のぴんとのびたブリッジボルトン夫人、デイビドたちの学校の考古学者先生・赤毛のサンディなど、魅力的な大人たちが加わりました。
ことにブリッジボルトン夫人! この魅力的な頑固ばあさん。すっかりファンになってしまいました。

ピーター、アーサー、デイビド。
一人ひとりがそれぞれに個性的(!)で、類まれな魅力を持っています。自分の世界を持ち、じぶんの夢や、厳しい義務感もまた背負っているのです。つまり、べたべたした「三人組」ではなくて、ひとり行動出来る子たちです。ひとりひとりが輝き生き生きしています。
でも、この三人が寄れば、その個性と特技を生かしあってパワー倍増。彼らのきつい冗談も、このチームワークの霊薬、冒険の果てのすかーっと晴れ渡った爽快感の源。
彼らはそれぞれ、教区牧師の子、豪農の子、船大工の子です。青春期の輝かしい冒険の日々であっても、先祖代々続いてきた生活を大切にする地道で頑固、誠実、打たれ強い荒野(ムア)人の血が流れています。
現代の若者たちの生活からは遠く離れたところにあるような気もしますが・・・彼らのまっすぐさにはいやらしさがない。

ピーター設計のシー・ペリル号(海禍号・・・前巻でピーターが作ったとんでもない自転車の名が黄禍号だったことに由来する)がダーヌル川に入ってからはおもしろさ倍増でした。自転車動力。外輪推進。
ことに小悪党アーチーとの競り合いは最高。なんと見事なチームワーク。
うふふん♪ この三人組がすごーく好き。そして、すかあっと爽快な文句なしのラストシーン。気持ちいいったらない♪

これ、三部作と思っていたら続きがあるそうです。その名も「シー・ペリル号二号の冒険」。これは絶版なのか、未訳なのか・・・読みたいよー読みたいよー読みたいよー・・・