『一杯の珈琲から』  エーりヒ・ケストナー 

オーストリアザルツブルクで、親友カールとともに夏の休暇を過ごそうとしたゲオルク(ベルリン在住)だったが、為替管理局の怠慢のため、国境を越えてドイツマルクを持ち出す許可がおりない。
で、ドイツとオーストリアの国境の町ライヘンハルに宿をとり、ザルツァッハ川(国境)のむこうのザルツブルクへと、毎日、小さな国境往来をして過ごすことにする。

国境のこちら側では高級ホテルに宿をとったお金持ち。国境のあちら側では一文なし。
ある日、ザルツブルクの喫茶店で友人カールと待ち合わせしたものの、ちょっとした行き違いでカールにあえず、頼んでしまったコーヒーの代が払えないで困っていたところに、目があったのが美しきコンスタンツェ。
たちまち始まる恋。
ところが身分は女中と名乗った彼女は本当は・・・

軽妙で洒落た、品のよいユーモアとロマンス。
どこまでが芝居で、だまされたのはホントはだれか、でも、騙されても気持ちいいじゃないの、と思わせてくれるのは、この一家の醸す温かい雰囲気のせいかな。
ちょっと古臭い感じがするけど、かろやかにくるんと踊りながら、珈琲をもう一杯いかが?と言いたくなるようなおしゃれなお話。

でも、わたしは、やはり、子供のために書かれたケストナーが好き。

この本は1938年にスイスで出版されました。当時、ドイツ国内ではケストナーの本は禁書でしたし、輸入も禁じられていました。