『残された人びと』  アレグザンダー・ケイ 

「磁力兵器」を使った大戦争のため、地球は地軸を狂わせ、そのために起こった大津波により、世界中のほとんどの人が死に絶えてしまった。

生き残った人々は、世界を支配しようとする「新社会」
そして、それに反発する「西方人」。主人公コナンはこちらに属する。コナンはたったひとりぼっちで、孤島に漂着して暮らしているが、仲間、ことに少女ラナの生存を強く信じている。
コナンが「新社会」の奴隷として捕らえられるところから話は始まる。 西方人はハイハーバーという高所に集まっている。彼らは、科学者であり人格者でもあるブライアック・ローを中心にまとまっているが、肝心のブライアック・ローは行方不明。
コミュニケーターのメイザルとテレパシーで交信して、指示を出している。
新社会のゆさぶり。脅迫。そして、ハイハーバーの支配者の地位を狙う若者たちの群。

ずーっとコナンとラナの側の事情が同時進行で語られていきます。
思いがけないブライアック・ローとコナンの再会。(まさか、ここで出会えるとはって感じでした)
新社会からの執拗な追跡。
刻々と緊迫してくるハイハーバー。
そして、まもなく大きな津波がやってくる。

これが書かれたのが1970年。
「新社会」と「西方人」の対立が、この世界での対立を写したもののように見えました。

暗い背景のなか、緊迫した場面が続き、一気に読んでしまいました。
さまざまな事件や問題が次々に押し寄せてくるのですが、わずか数日間の物語なのですよね。
最後の一文が、さりげなく、ひきしまった感じで、はっとして、じわっと感動させてくれました。
でも、このあと彼らはどうなっていくのか。たくさんの問題を抱えて・・・
これは出発の物語でした。出発を前にして、散り散りばらばらになっていた人々をまとめる物語、だったかもしれません。
暗い夜の物語がほんのりと黎明を迎えた、という感じのおわりかた。この先のことを様々想像してしまいます。