>芸術とは、
   綺麗に手ぎわよく嘘をつくこと、人造の花びらを拵えること、
   ダイアや真珠を化学方程式に依ってでっち上げることである。
   即ちみんなのものを端的に美しくあざむくことである。

意味のないばかばかしさとロマンチシズム。耽美でゴージャスな感じ。
好きなのはなんといっても「一千一秒物語」、それから、「夏至近く」も好き。絢爛豪華な(それでいてメッキであることを堂々と見せびらかすような感じの)御伽話がまぶしい。

   >ある晩 唄をうたいながら歩いていると 井戸へ落ちた
      HELP! HELP! と叫ぶと
    だれかが綱をおろしてくれた
    自分は片手にぶら下げていた飲みさしのブランディの口から
    這い出してきた         (「一千一秒物語」より)

  >>朝になって街が桃色になった時
    いい空気を吸おうと思って外へ出ると 
    四辻のむこうから見覚えのある人が歩いてきた
    「ごきぶんはどうですか 昨夜は失礼いたしました」
    とかれが云った
    たれか知らと考えながら家へ帰って来ると
    テーブルの上に薄荷水が一びんのっていた 
                    (「一千一秒物語」より)


一気に読んだら疲れてしまう。
意味なんか考えちゃダメなんだと思います。おとなしく煙にまかれるような読み方もいいかな。

全然栄養ない(どころか、毒にしかならん)すごい色した駄菓子のように、たまーにちょっとつまむのがいいかな。