『大人問題 』 五味太郎

大人問題―-「おとな(は・が・の)もんだい」と読みます。即ち、「大人は問題・大人が問題・大人の問題」。
はっきり言えば、子供の問題は大人の問題だということです。子供の問題をつきつめていけば、何かが可笑しい、子供をめぐる大人たちがどこか狂っているんじゃないか。何にも考えていないんじゃないか。
そんな大人のおかしなあんなことこんなことを五味太郎らしく、シニカルにユーモラスにテンポよく列挙していくと、ちゃんと子供の今が見えてくるから不思議不思議。

気になるフレーズがいっぱいある。
それは、五味さんの言い分に妙にすっきりした気分になって「いいぞいいぞもっと言えー」といいたいようなフレーズ、逆に矛先をつきつけられたようで、じわっと汗ばむようなフレーズ、それから「そうかい?そんなもんでもないだろう」とちいさな声でつぶやきたくなるフレーズ・・・
たくさんの「気になる」「後で読み返してみよう」に、いちいち付箋を貼っていったら付箋だらけで、なんだか貼るのもばかばかしくなってしまった。

五味さんは決して考えを押し付けているわけではない。この本を読んで「わかりました!お説ごもっとも!」とひれ伏すことも望んでいない。 自分の耳で聞き、自分の目で見、考えたら?自分の頭で。あなたにはあなたの別の帰着点もあるだろうから、と言われているような気がする。そして、その帰着点が、五味さんとずれていたって、それはそれで構わないわけだよね。
要は、自分の声で自分の言葉でしゃべること。(それができない大人が、できているようなつもりでトンチンカンなことをしている善人があまりにも多いのが問題)

なんだか目がくらみそうだなあ。

五味さんの絵本みたいだ。先入観すべて取り去って、自分の素の思いを吐き出していく。そしてそれをあっちこっちと転がしていく。その行き着く先は作家ではなくて読者の胸のなかにある。
そんな感じ。

引用するにしても、あまりにも心に残るフレーズが多すぎて・・・でも、ひとつだけ。

  >教師は馬鹿の一つ覚えみたいに、
   紙の乱れは心の乱れ、服装の乱れは心の乱れ、なんて言いますが、
   その「心の乱れ」がポイントです。
   僕は、心は乱れるためにあると思います。
   「乱れない心」なんて、心ではない。