『太陽の東 月の西 』 アスビョルンセン編 

北欧、ノールウェイの昔話が、表題作を含めて18編。
グリム童話などヨーロッパの昔話に共通する部分などもあり、その昔、お話が遠く大陸の上をゆったりと旅していたのだろうか、と、思ったりしています。
グリムの「どろぼうのおかしら」によく似た「どろぼうのかしら」、「コロコロパン」によく似た「パンケーキ」、「しあわせハンス」に良く似た「山腹のグドブランド」・・・などなど、ちょっと「アラ、似ている」と思いつつ、でも、途中から道が分かれて、北欧の雰囲気を写して、まったく違うお話になっていくところが興味深いです。
トロルや白熊の登場に、ああ、北欧のお話だなあ、と改めて思います。そして、ダイナミック。ときに可笑しくて、時にロマンチック。そして、何より楽しい、これが一番。

いくつかのお話に共通したもので、ふと気がついたのは、
夫婦(王子と姫)のかたほうが家族のもとに里帰りしたい、と告げる場面。そのとき、相手は、「家族とは口をきかないでもどってきてください」「おとうさんとだけはあいさつしないでください」「おかあさんと二人だけには決してならないでください」と頼む。「…そうでないと、わたしたち二人とも不幸になりますよ」
連れ合いは「そのとおりにする」と約束するのですが、結局約束は破られるのだ。(あ~あ。だけど、そうじゃないとお話は進展しませんのでね。)
この約束はなんなのでしょうね。夫婦の契りが親子の関係より深くあるこべきだということを示唆しているのかしら。
そして、その境地に立つには、裏切りがあり、後悔があり、試練があり…その試練を乗り越えて初めて…ということなのかなあ。

それから娘達が元気なのがいいな。不幸にヨヨ…と泣き崩れるお姫さまたちではなく毅然と運命を切り開いていく少女たちが素敵です。

好きなのは表題作。だって「太陽の東 月の西」ですもの。タイトルからして、なんともミステリアス。
物語はダイナミック。黒々とした北欧の森に始まり、西風、南風、東風、北風…の助けを借りて空を飛ぶ…
最後のトロルのおわりかたもなんとも豪快で、からっとした読後感がよかった。