『ともだちは海のにおい』  工藤直子 (長新太絵)

なんだかほっとします。この本好きです。
イメージは広くて深い海。きれいな青。でも、水面はおひさまに照らされてきらきらしている。おだやかで静かな海です。
くじらといるかが出てきて友達になります。
友だちってなんだろうなあ。

くじらは、大きくて山のようで、あたまのなかにはゆめと本のあらすじがつまっています。ビールがすきで、夜更かしで寝坊。太陽が好きで、一日じゅうでもじっとしていられる。
いるかは、小さくて流れ星のようで、あたまのなかにはバネとスピードがつまっています。お茶がすきで、早寝早起き。月がすきで、一日じゅう何かしている。
くじらは、いるかが好きである。いるかはくじらが好きである。

いるかの誕生日にくじらが贈り物をします。くじらに素晴らしい満月を見せます。
 >「きょうは、一年でいちばんきれいな満月なんだ。
   この、ひかりの道をあげたくてね、だから、きょう、誕生祝いをしたの。
   気に入ってくれた?」
なんて素敵な贈り物だろう。これに対するいるかの返事も好きです。
 >「いま、ちょうど、こんなのが欲しい気分だったよ。ありがとう、くじら。」

宇宙がどれほど広いのか。
いるかのいるところから、太陽系の一番遠い星はどのくらい離れているのか説明するために、くじらは、いるかから離れてどんどん泳ぎます。いつまでもいつまでも帰ってこない。
やっと帰って来たくじらにいるかはいいます。
 >「おかえり、くじら。うちゅうって、さびしかった」

広くてさびしい宇宙のなかで、こんな友達がいたらいいな。
こんな友だちとゆったりとビールやお茶を飲みながら、時々、詩や物語を聞かせる。聞かせてもらう。お誕生日に月の光の道をあげる、もらう。似ているところがまるっきりないけど(まるっきりないから)相手のことが好き。それだけ。

すてきな言葉がいっぱいの本。ため息がでてしまう。
この本を読んでいる時、おいしいお茶が飲みたいなあ、と思っていました。で、お茶を淹れてゆったりと読みました。