『平行植物』 レオ・レオーニ 

平行植物とは何か。
学術上、La botanica pallalelaと称される、今なお解明されざる奇妙な植物群の総称である。
平たく言えば、現実と平行して、分析を拒否するある植物群の総称、です。(これを植物と呼べるかどうかはまだまだ議論の余地のあるところですが。)
レオーニの言葉を借りれば、「植物の前にことばであった」ということになる。
つまり、えーっと、どういうことかというと・・・

緻密な図版が多く挿入されていて、現実と非現実のあわいに生息するこれらの幻想的な生物の不思議さ、奇妙さ。これらがこちらに作用しようとする力を想像して、憧れる反面、恐れも感じてしまう。
小難しい学術書です。
読み始めると眠くなります。
平行植物とは何か」「起源をめぐって」「形態について」、さらに、細かい分類へと進んでいくのですが、多数の引用文献、命名法の説明、それらについての細かい年月など、きっちり書き込まれています。引用文献の詳しい説明、欄外に各著者や研究者の写真入り。おっそろしい専門書の体裁です。
生真面目な文面はまさしく、学会に発表向きで、わたしごときが寝る前にぼんやり読んでいたら、すごい速さで、睡魔のトリコになるのでした。

斜め読みです。
しかし、不思議な植物だ。
ふつうの知覚の仕方では決して認識できない。その効用(?)は不思議な限り。そして科学のメスが入ることを頑なに拒否する平行植物群との戦いが今なお続いている。今にわたしのような凡人でも見たり、効用(実体の伴う幻覚!)に預かったりできるようになるのかな。

なーんてね。
この本、ヘンな本なんです。まったくみてくれは小難しい学術書。なかみも真面目に真面目に「平行植物」というものを研究している。 だけど、これがぜーんぶ、レオ・レオーニの想像の世界なのです。 えーっ、あの図版全部うそ?じゃ、あの引用文献は?おびただしい研究者の写真は?
半端じゃないです。空想だけでここまでやるか?
空想するだけならだれでもできる。これに肉を与えて、秩序を与えて・・・豊かで、壮大なエネルギーです。こういうところから芸術って生まれるのだなあ、なんて感動してしまったりして。

端から端まできりきり読むのはつらいけど、眠れぬ夜などにぱらぱらとページを繰るのは楽しいだろうな。
なんだか、わたしにも見えるような気がしてきたよ。
「壁の向こう側」の不思議な植物が。