『紳士とオバケ氏 』  たかどのほうこ

古くから続いている古い家にひとりで暮らすマジノ・マジヒコ氏は真面目が取り柄で、判で押したような規則正しい生活を送っている。
その家にはマジノ氏そっくりの家オバケのオバケ氏が住んでいた。
マジノ氏が眠っているときがオバケ氏の時間、オバケ氏が眠っているときがマジノ氏の時間だったのですが、ある日、時間を間違えたマジノ氏はオバケ氏に遭遇。
それからこの二人の不思議な交流が始まるのですが、これが、ほんとにもう、最高におかしくて、素敵なんです。
ふたりとも真面目なのがいい。
とはいえがちがちのマジノさんと、ふわーっとしてひょろひょろーっとしたオバケ氏。
傍目(読者目)にはすごくお茶目な二人ですよ。真面目、というより、純粋な感じ。かわいいおじさんたちだ。
活動時間の違うふたりの文通(!)
マジノ氏は、オバケ氏に手紙を書くために、3種類の便箋から、すかし模様の入った水色の便箋を選びます。相手に合わせて便箋を選ぶのがいいな。
そして、このふたりの文通の、礼儀正しい文面がほほえましいです。
この手紙の文面を記す本の活字が、マジノ氏のは力強い太字になっているのに対して、オバケ氏のはよわーい細字(薄くてなんと儚げな…)になっているのもまたいいんです。

そのうち、本を貸してあげたり、一緒にチェスをしたり、おじいさんの失くし物を二人で捜したり、
かわりばんこに(マジノ氏の)会社に出勤したり・・・ ふたりとも毎日をほんとに楽しんでるのが伝わってきて、思わずにんまりしてしまうのです。
真面目が取り柄のマジノ氏が楽しむ!そう、いつのまにかいろいろなことが変わって来ました。少しばかりルーズになったけど、自分も回りもなんだかいい感じなのだ。

それから、この本の魅力は挿絵の飯野和好さん。この絵がほんとにいいんです。マジノ氏もオバケ氏もなんて魅力的なんでしょう。(マジノさんの会社の同僚も!)特にあの目つき。たまりません。最高。

このひょうひょうとしたおかしみ。そして、ほのぼのと温められる感じ。たかどのほうこさんの魅力ではないか、と思います。大好きです。
この本のなかには「王子と乞食」「ジキル博士とハイド氏」が出てきたけど…たぶん、こちらのほうが名作かもと思っちゃいます♪