『ゴッホ殺人事件(上下)』   高橋克彦

文庫とはいえ上下巻900ページあまり!
それなのに、ページをめくるスピードがまったく衰えることがない。
謎、殺人、裏切り、謎、また謎。そして、ロマンス・・・
舞台はパリ。それからスイス、アムステルダム、ドイツを巻き込み、日本に移行する。
現代を舞台にしながら、遠くゴッホの時代、ナチスが台頭した第2次大戦。そして、その戦後を俯瞰して、読者であるわたしも時代を遡る。

ミステリの作家ってすごいな、すごいこと考えると思います。
ゴッホの自殺に疑問を投げる。そして、本当は殺されたのではないか、という仮定。では、その犯人とは誰なのか?もうびっくり。長い物語の中、圧巻はこれだろう、と思います。
そこに持っていくまでの証明を読んでいると、圧倒されてしまいます。
もしや、そんなことが?あったのかもしれない、と思ってしまいます。
(だけど、犯人にされた人がかわいそうだ、とちょっと思ってしまった。たまたま歴史的有名人の近くにいたために後世こんなふうに言われるなんてねー、説得力がある分なんとも。)

そして、ナチスによって押収されたゴッホの幻の作はどこにあるのか。
冒頭に現れたあの絵のイメージはなんとも鮮烈で、目に見えるようです。ああ、実際みたいものです。
各時代が残した謎と現代の連続殺人がどうからんでくるのか…ため息。
むかし模写した「ひまわり」思い出しました。(でも、下塗りから始めてそんな数日で描けるもんじゃないですよね。プロは違うのかな)
50点の油彩。どのくらいの時間を要したことでしょう、とつまらないことが気になってしまった。うーん、それこそ怖ろしい天才。
ああ、おもしろかった。としか書けません。ミステリの感想って、難しいです。言わずもがなのことまで言いそうで危ない…