『スカイラー通り19番地 』  E・L・カニグズバーグ 

マーガレット・ローズ12歳、両親がペルーへ旅行中の夏休み、サマーキャンプに参加したが、同室の少女たちからいじめを受け、孤立する。マーガレットを救いだしたのは、アレックス大伯父さんだった。大好きな二人のおじさんたちが裏庭に作っている創作タワーが、街の景観にそぐわない、なんの役にもたたない、という理由で撤去されることを知ったマーガレットは、大人社会に敢然と戦いをいどむ・・・

70歳のカニグズバーグの最新作、と言うことで、期待して読みました。

登場人物は魅力的。アレックスおじさんとモリスおじさんのキャラクターがおもしろいし、犬のタルトゥ―フォもいい味出している。
マーガレットに協力するジェイクも魅力的です。あの爽快な(?)二面性好きです。
そして繊細にして自立心旺盛な現代っ子マーガレット。
信用できない大人が自分のことを「わたし」ではなく「わたしたち」と言うことに着目して、そこから「女王」を連想、高らかにイギリス国歌を歌うところなんか、とてもおもしろかったです。

でも、おもしろい、と思って読んでいたのは、正直前半まででした。つまらなくはありません。仕掛けは上々、続きが気になって、結構あっという間に読んでしまったのです。
でも、読み終えて、うーん、イマイチ・・・なんだ、この寂しさは。

-----------このさきネタばれします----------
おじさんたちの塔は「建造物」ではなく「アウトサイダーアート」だ、とするのはOKです。
だけど、それを守るためにマーガレットは、会った事もない大人に長距離電話で相談します。この人達(ピーターとロレッタ)がぴんとこないんです。電話を介した関係のせいか実在感が乏しいように思います。
塔を守るための方法。その大綱を考えたのが大人(大変力のある)。子どもの本で、これはないんじゃないの?
最後のほうで、キャンプの時にマーガレットをいじめた少女達とキャンプの校長が(ジェイクに断罪されたとはいえ)協力するようになる場面は爽やかすぎて、なんだか違和感。あんなひどいいじめ方をしておいて、こんなにさっぱりと水に流しちゃうかなあ。
さらに解決策は、塔を大企業に買い取ってもらって残す、というもの。これはあんまりです!マーガレットやおじさんたちは、こんな解決方法を本当に望んでいたのでしょうか。
スカイラー通り19番地のあの庭に残す方法は、なかったのかなあ。
さらに、事件がおわったあと、十数年後の後日談がある。これは余計な感じがしました。