『わんぱくピート』  リーラ・バーグ 

4歳の坊やピートの日々。相棒の影法師とともに、木の枝、ロードローラー、穴や水たまり、テントウムシなどと出会い、楽しく遊ぶのです。
ピートがやることを見ているとなつかしいな、と感じます。
三輪車で水溜りを通って、濡れた車輪のあとが道路につくのを「線路」に見立ててよろこんだり、
道にのびた影法師が穴に落ちたり車にひかれたりするんじゃないか、と心配したり、
水道の蛇口から落ちる水滴の音を「ピートちゃん!」と聞き分けたり…
どれもこどもの日に「そういえばそんなことが…」と思い当たるエピソードばかり。

それから、各章にかならず、大人が一人出てくるのです。この人たちはみんなピートの知り合いではありません。ただの通りすがりです。
ピートのやっていることに「ねこをいじめたでしょう」「花をとってはいけません」「人のうちの生垣で一体何をしているんだい」って感じでかかわりを持ったり、
または逆にピートから「おじさん、ぼくのねんど、ふんでるよ」とイチャモンをつけられたことがきっかけでピートと出会うのです。
この大人たちがいずれも根気よく丁寧にピートの目線で関わろうとするのがすてきです。良い子供の本には魅力的な大人が出てくる。この本も然りでした。

ピートの家はでてきません。家族もでてきません。おとうさんもおかあさんも兄弟も、出てきません。
それなのに、この子が大切に育てられているのがよくわかるのです。プライドが高くて(笑)意地っ張りだけれど、素直です。何にでも好奇心旺盛で、人に対して決して物怖じしません。
この世界は安定していて平和です。
 この本のなかのピートの世界を見ていると、本当に楽しくてなんだかほっとするのです。
子供が一日の終わりに、布団の中で、読んでもらうのにふさわしい「きょうもたのしい一日でした」で終わる一章一章がいいです。