はなはなみんみ物語 第3部
一巻ではまだまだかわいかった子どもたちが、物語の進行とともに成長して、やわらかい心を持った若者になりました。
子どもたちの物語です♪
トベリーノ トベリーノ ドンドン
という呪文とともに、月明かりのなかに舞い上がる小人たちは、それだけで、華があると思います。
そして、はなはなたちの旅路、つぎつぎに遭遇する冒険、「いのちの幕」の中で、ひたすら待ち続けるのびとたちにせまる危機、一気に読んでしまいました。
過去から負の遺産をひきついだ若者たちが、自分たちの未来を切り開き、祖先の罪のつぐない(自然に対して、また、他の生き物に対して)をしようとします。
実際には、未来にわたって長い時が必要であること、あるいはとりかえしのつかないことで あったりするわけで、ここでも、戦争の残酷さ、文明の頂点に立った者の愚かしさがくり返し語られていきます。
過去からわたしたちが受け継いだもの。作者のあとがきのことばを借りれば、
>それを善にするも悪にするも私たち人間なのだと思うと、
人間の運命のかぎを握る最後のものは、
目に見えない私たちひとりひとりの“心”ではないかと思うのである。
さまざまなメッセージが、このかわいらしい挿絵と「トベリーノ トベリーノ ドンドン」の後ろに隠されているのですが、過去に対する苦々しい後悔、というよりも、未来に向かって生きる若者たちへのはなむけの物語になっているのです。
この物語のなか、印象に残っているのは、「いのちの幕」のなかで、そびゆじいさんがのびとに、「言葉をなげる」魔法を教える場面です。
そびゆじいさんの話のなかに、「…言葉はいのちある生き物だから、…」ということばが出てきます。
この言葉にはっとさせられます。
そして、以下の詩が、のびとに与えられるのです。
>孤独な言葉は からからと
宇宙に舞っているだけ、……だが、
仲間を組んだ 言葉たちは
花と剣とを持って
徒党を組んで せめてくる
小人を 天の高みまで 引き上げようと…
小人を 奈落の底まで ひき落とそうと…
この世の知恵も おろかさも
知り抜いている
言葉たち……
「言葉」というものの魔力を強く意識して、考えてしまいました。
まさに命ある生き物のように、人をも自分をも高めたり低めたりする「言葉」
ふだん、あまり考えずに使っている「言葉」ですけれど、「なげる」という小人の魔法を使わなくても、充分、魔力を持っている、と思います。
最後に200歳になったはなはなが出てきます。すでに、くりなもみんみもいなくなってしまった。のびともいなくなってしまった。
たくさんの無邪気な孫やひ孫と一緒にいる、老いたはなはなの姿は感無量でした。冒険は終わった。新しい命の時代が来るのだな、と。