『アルケミスト――夢を旅した少年』 パウロ・コエーリョ 

主人公はスペインに住む羊飼いの少年です。彼は、夢で見たことを確かめるために、自分の羊を売り払って放浪の旅にでます。
さまざまな「前兆」に導かれながら、長い道のりと年月を経て、夢に近付いていきます。

かもめのジョナサン」に似ている、とこの本を貸してくれた人に言われたのですが、なるほど、禅問答のような、御伽話のような、深遠な本です。
夢を求めて旅立つ人や、その途上の人にとってはこのうえないガイドブックなのでしょう。

アルケミストというのは、錬金術師、という意味だそうです。ほんとうに金を作る錬金術師も出てきましたが、人間が夢にむかって歩んでいく過程で鍛えられ、純度を極限まで上げていくさまを錬金術に喩えているようで、美しい表現だと思いました。
羊飼いが見る夢、クリスタルと磨く仕事、砂漠に夢を求めること。道具立てが素晴らしかったです。

昔話「ねずみの婿選び」の話をちらっと思い出しました。
ねずみが、自分の娘を世界一偉い人の嫁にしようと考える。太陽が一番偉いか。いや、太陽を隠す雲が一番偉いだろう。いや、雲を吹き払う風だろう…で、結局、一番偉いのは、ほかならぬ自分たちねずみだった、と言う話。
昔話のなかには、たくさんの知恵がある。とてもスマートにさりげなく伝えてくれます。
対して、この本は・・・
うそっぽい物語は好きですが、そこに「教え」が垣間見えると、大急ぎで逃げ出したくなってしまいます。もう少しさりげなく教えてくれるといいのになあ。