『メキメキえんぴつ 』  大海赫

ある日、ぼくは知らない女の人から、成績がメキメキあがる「メキメキえんぴつ」というのを売りつけられた。「ぼく」は、どこへ行くにもメキメキえんぴつを持ち歩いた。
……
……
そして、ついに
  >おかげで ぼくの せいせきは、メキメキ よく なった。
おしまい。
……
よかったじゃない。
よくない! 実はこれ、すっごくこわい話なんです。
だってこの主人公、えんぴつに支配されてしまうのです。えんぴつの奴隷です。でも、だれも知らないんです。これでおしまい。ひえーって感じです。

表題作「メキメキえんぴつ」を初めとする短編(というよりショートショートかな)が5話おさめられています。
いすれ劣らぬ不気味さです。
30年ぶりの復刊だそうです。
強烈な本。絵も文もなんともいえない雰囲気があり、小学生のときにこれに出会ったらたぶん、すごく印象に残っただろうなあと思います。
ほんとに児童書?
  字は大きいし、ひらがなたくさん。2~3ページおきに大きな挿絵がふんだんに盛り込まれている。
だけど、ほんとに児童書なの、これ?
すべてが終わったら全部夢だったとか、いつのまにか一山越えて悩みが解消されていた、とか、そういうのじゃないのです。
現実ってもんはもともとこわいものなんだ。夢なんかでお茶を濁すな。目を開いてちゃんと見ろ。
あまやかしてなんかやらないぞ。おばけなんかいないふりするのはもうやめな と、言われているような気がします。
厳しいな。