『ぼうしネコとゆかいな仲間 』 ジーモン&デージ・ルーゲ 

おしゃれな帽子をかぶったネコが、田舎の町のだれも借りてのつかない家を借りて、下宿屋(?)を始めます。
このネコ、お人よし、というだけではなく、なかなかのやり手で、口八丁で丸め込み(?)、家主のマウルビッシュさんは、とうとう、家賃を1/3に、しまいにはただにしてしまいます。

下宿人たちが、なんともユニークで、しっかりものの雌鳥コッコ、絶滅したワニの親戚(?)ケーケー、孤児のプリンバチの坊や。双子の小人・発明家のエンドウマメ兄弟…なんだかおかしな総勢十人の大家族。
みな変人でどこか胡散臭くて、たぶん世間から見たらつまはじきされる余計ものなのですね。
そして、彼らが互いの個性を認め合い、肩寄せあって共同生活していくのは、おかしいんだけど、温かくて、さばさばして、ちょっとほのぼのしてしまいます。

それぞれに魅力のあるキャラクターなのですが、実は一番魅力的なのは(ぼうしネコを置いて)、家主のマウルビッシュさんです。
いつも苦虫をかみつぶしたような顔をして、文句ばかり言っているくせに、
そして、家賃のとりたてに行ったくせに、とれない。
「さいふにこれしかないので、とりあえすこれを」と差し出されれば、「あとでいい、その金で、その子にズボンを買ってやりなさい」と言ってしまう。
自分はけちんぼで、頑固でおこりっぽい、と思っているけど、実はさびしがりやのおひとよし。

みんな弱い。傷つきやすい。だけど、それを見られるのはいや。お互いにそれを知っているもの同士が、互いに相手をひきたて、欠点を補うまではできないけれど、片目くらいはつぶって、なんとかやっていきましょう。
そして、そのはざまに生まれるユーモアは、あっけらかんと明るい。