『コーンウォールの聖杯』 スーザン・クーパー

ドルー家の3兄弟は、夏を過ごすために借りたコーンウォール地方の古い家グレイハウスで、ある日、羊皮紙に書かれた古い地図をみつける。
謎を秘めながらも、温かく見守るメリイおじさんの助けを借りながら、子どもたちの宝探しが始まる。
しかし、その宝を狙っているのは、三人の他にもいるらしい。急に三人の身辺がきなくさくなってくる。

おもしろかったです。れっきとした(?)冒険物語で、三人の子どもたちとともに、どきどきわくわくを充分に堪能させてもらいました。

登場人物は、すっきりと善と悪に分かれ、敵か味方かどちらかでした。
この単純さは、気になるといえば、気になるけど、人間を描くというより、光と闇の入れ物としての象徴的な意味合いで人物を書いていたんじゃないか、、と無理やり納得しました。
三人がさがしている宝は、悪の手にわたると大変なことになるらしいのです。この宝物というのが、アーサー王ゆかりの杯なのですが、この杯のことが、物語の中では、「聖杯のようなカップ」とか「聖杯ににせたカップ」と書かれているのです。この表現が今ひとつ座りが悪くて、すっきりしないように感じました。「聖杯」そのものじゃないのかな、それでは・・・。よくわからない。
そして、この杯がいとも簡単にみつかってしまう。何世紀も何世紀も、隠されていた秘宝、善と悪とが必死になって追い求めていたものにしては、
子どもたちが夏休み、偶然地図を手に入れたことから始まり、(その後様々な事件が起こったとはいえ、)宝発見までが、わずか数日の物語だったことが、うーん、やっぱりあっけなく感じられ、「なんで、これがそんなに長いあいだ、見つからなかったのだろう・・・と思ってしまいました。

お話の舞台はすごく魅力的でした。
まず、グレイハウスという家なのですが、秘密の空間がいっぱいで、おもしろそう。たとえば、階段の踊り場に、普段は気がつかずに通り過ぎてしまうような小さなドアがあって、その奥には船室のようなつくりの部屋があります。
二階の寝室にある大きな洋服ダンスをどけると、その裏には秘密のドアがあり、壁と壁のすきまに作られた細い階段に、出る。
それに、古い木びつが廊下の隅に無造作に置かれていたりするのです。
そして、海辺のこの村。潮の満ち干で、地形が大きく変わる、大きな岩がそそりたち、「探検においでー」と誘ってくれます。行ってみたくなってしまいます。
この舞台をかけまわる子どもたちが生き生きとしてすてきでした。
長いあいだ絶版だったのが、復刊ドットコムの投票のおかげで、復刊された本だそうです。
子どもの時一度読んだら、きっとこのイメージは残るでしょう。復刊を望む声が高かったの、わかるような気がしました。

ラストが、今ひとつ、しっくりこないのですが、これは、このあとにつづく「闇の戦いシリーズ」4部作の前奏曲のような意味合いの作品なのだそうです。
つまり、これは、始まりなのですね・・・。このあと四つ。読めるかなあ…。
正直、終章を読んだ時には、イマイチ、という感じで、「このさきは読まなくてもいいや」と思ったのですが、そのあとのエピローグで、メリイおじさんの名前について、すごーく気になることが書いてありました。
ええー?…やっぱり読まなきゃ、かしら。