筆者向井元子さんは、子供文庫の世話人です。
この本は児童書の世界の案内板です。(サブタイトルは「虹の町の案内板」になっています)
大好きな本、名前は知っているけれど読んだことのない本、存在さえ知らなかった本、読んだは読んだもののその魅力に気付かず通り過ぎてしまった本…が、
筆者の文庫での経験とその見識の深さで吟味されて、本にまつわる様々なエピソードを交えながら紹介されています。
そして、そこここに文庫での小さな風景が顔を覗かせます。
読んでいるうちに、わたしと小さいときの子供たちがお世話になったK文庫のTさんが筆者にだぶってきました。
図書館よりも小規模な文庫は人のつながりが密です。(世話人は子供たちの名前を決して忘れません。)
本もまたそのつながりの中で、たとえば母親たちの井戸端会議の仲間であったり、子供たちのごっこ遊びの仲間であったりします。
文庫には図書館とは別の雰囲気があります。そしてその雰囲気は、そのままその文庫の世話人さんの雰囲気であるように感じます。
>この世の中にはすでに星の数ほども本があり、
この先も浜の真砂ほど本が出ることでしょう。 いったいそのうちの何冊を生きているうちに手にとることができるだろう、
そう思うとじっとしていられなくなり、
立ち上がって走り出したくなる気分です。
それでいながら古い本をひっぱり出してきて、
二度三度と読み返すなどと能率の悪いことをやりたくなるのも、
また人の常というもの。
古い友人に会いに行くように、
ときどき手に取ってページをめくらずにはいられない、
そんな本が誰にでもきっと何冊かあるでしょう。
と、筆者はいいます。同じ思いをこめてうなずきながら、これだけたくさんの本を読まれている方でさえ、そういうものなのかあ、それじゃ、わたしなんか無理もあるまい、と妙に感心したりします。
星の数ほどの本、一生かかっても読みきれない本が自分の前にあるなんて、なんてわくわくすることでしょう。
文庫はわたしに小さな人たちと本で遊べるうれしさをわけてくれました。
子供たちと一緒にもっともっと面白い本をさがしていきたいなあと思います。